更新日:2023年03月12日 09:08
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便利でお得なフェ●チオカードはいかがですか? 今ならTポイントが貯まります――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第35話>

一年間、アレを付け放題の超絶お得な風俗店のカード

どれくらい前だっただろうか、それこそ僕はTポイントカード作りたてで、ポイントを頑張って貯めていけばプレステくらい買えるんじゃないか。よしプレステ分くらいポイントをためるぞ、と躍起になって貯めていたことがあった。それこそ、3円、4円を躍起になって拾っていたのである。あの頃の僕は純粋に輝いていた。 頑張りの甲斐あって300ポイントくらい貯まった頃だろうか、同じく躍起になってTポイントを貯めていた友人のK君、とてもじゃないがここで名前は出せないのでK君とさせてもらうが、そのK君があるセリフをぼやいた。 「あーあ、風俗店でTポイントカード使えればな」 K君曰く、やはりコンビニや外食などの小売りでは使う額はたかが知れている。結果、貰えるTポイントも微々たるもので思うように貯まらないのだ。どうせならもっと使う額が大きい場所でTポイントを貯められたらいいのに、という主張だ。 その点、K君が好きな風俗店は使う額が大きい。なにせ1万円、2万円の世界だ。ちょっとオプションを張り込んだらすぐに天文学的金額になる。そうなれば付与されるTポイントもかなりのものだ。 「風俗店でTポイントカード使えればな」 K君は確認するかのようにもう一度言った。 もちろん、日本中探してもTポイントが使える風俗店はないと思う。それでもK君は求めた。欲した。なぜならば、つい最近、行きつけの風俗店で大きな買い物をしたからだそうだ。 彼が常連となっていた風俗店は、いわゆる激安店で、値段がかなり安かった。そのかわり、受けることができる性サービスも最低限度であった。そこに自分なりにアレンジしてオプションを組み立てていくスタイルだった。 例えば、女の子に裸になってほしいなら「オールヌード」というオプションを1000円でつけるし、キスしてほしいなら「キス」というオプションをこれまた1000円くらいでつけるというスタイルだった。最強のカードデッキを組むかのように性サービスを組み立てるのである。 まあ、満足いく感じでオプションをつけていたら普通に一般的な店の料金になる、というものだった。 その中でも人気ナンバーワンのオプションが「フェラチオ」であった。これが3000円とやや高価であったが、やはりどの客もフェラチオは受けたかったらしく、人気ナンバーワンのオプションとなっていた。 ある日、店の常連中の常連、その店ではダイヤモンド会員と呼ばれていたらしいのだけど、そのダイヤモンド会員にだけ向けて衝撃的なサービスが展開された。 「フェラチオカード」 そんな名前のサービスが導入されたのだ。 このカードを購入すれば1年の間ずっと無料でフェラチオつけ放題という衝撃的内容だ。「フェラチオつけ放題!」と「ソースつけ放題!」みたいなノリでチラシに書かれており、大変興味を惹かれたらしい。そんなサービスあるか、フェラチオつけ放題だぜ、とついつい呟いてしまったらしい。 フェラチオつけ放題。その響きは蠱惑的だった。 ただし、この魅惑のカード、お値段が少々高く、9万円もしたらしい。それでもK君は計算した。 9万円ならばフェラチオオプション30回分だ。1年間で30回行くなら元が取れる。この店にはほぼ毎週行っている計算なので、普通に年間50回は行く、完全にお得、よし、買いだ。こういった思考を経たようだった。 そのカードを見せてもらったが、普通のキャッシュカードみたいな大きさで、カードの中央に相撲取りみたいなフォントで「フェラチオカード」と書かれていた。頭にくることに、カラーデザインをTポイントカードに似せてカモフラージュしているのだけど、ドでかくフェラチオと書かれているので全くカモフラージュしきれていないのである。 僕もこれまでの人生で様々なカードを見てきたが、ここまで卑猥で意味不明なカードは見たことがない。 「9万円も使ったんだからTポイント貯められたらなあ」 K君はそう言っていた。全く持ってその通りだ。完全に同意だ。そう思った。
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この手のポイントカードなど、やはり必要ないのだ
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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