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「私たちにもカネをよこせ!」三姉妹の本性が現れた遺産相続のゆくえ

泥仕合が収束したワケ

 最終的にこのケースがまとまった要因はふたつ。ひとつは、相続自体まだ発生していなかったこと。もうひとつは、無関係な人間が干渉してこなかったことにある。  被相続人であるお母様は、ご容態が芳しくなく入院が続いていたのだが、わずかながら回復して一時帰宅が可能と聞いた。そこで大鉈を振り下ろしてもらえるように根回しをしておいたのだ。そもそもは全てがお母様の資産なので、それをどう分配するかの決定権者である。あんまり子供たちがわがままを言うようなら、極論としては誰にも譲らずに寄付をするという選択もあり得たので、相続人たちは従わざるを得なかった。 遺言書 こうして、ご長男は予定通り実家に入り、アパートについては賃料ごと三姉妹の手に渡るという、ごくシンプルな着地点となった。資産価値としては大きく差が付いているが、先に亡くなったお父様もそう考えていたとお母様の口から出たことも大きかった。この後、生前に正式な手続きで遺言書が作成されて、万が一のときにも揉めることは無くなったのである。  もうひとつの要因、「無関係な人間」とは相続人たちの配偶者、つまりご長男の奥様、三姉妹の旦那様のことである。相続発生の家の者ではないのだから、そもそも発言する権限はないのだが、通常は最も大きな障害となる。今回は幸運だったとしか言えない。もし、彼女の旦那たちのひとりが、事業経営などで金策がうまく行っていなかった場合は、ここぞとばかりに現金をよこせと口を挟んできただろうし、直接が無理でも嫁である当事者を介して割り込んできたに違いない。

1年以内に、三姉妹それぞれからされた相談内容とは

悩む 今回のように相続問題をこじらせないためには、まずは当事者たちが明るく笑って話せるうちに話題に挙げてまとめておくことに尽きる。相続の話をすると、親の側=被相続人側は「そんなに揉めるほど持っていないから」と話をそらしがちなのだが、持っていないゆえに争うケースを筆者は知っている。50万円の争奪戦に、100万円以上かけて法廷で戦うことがあるのが人間なのだ。  だから、随分と浸透している「終活」をぜひとも検討して欲しい。子供の側=相続人側に話を振ると「縁起でもないことを言うな」と怒って止められてしまうことが多い。既にお身体のどこかを悪くされていたならなおさらだ。  だったら、正月や盆休みに家族が集まる機会にでも、「あなたのいなくなった後のことはどう考えているか」くらいは話を振ってみてはいかがだろうか。待ってましたとばかりに自分の胸のうちを明かしてくれるかもしれないし、初めて聞く何かがあるかもしれない。いざという時に備えるとはこういうことだ。  本人不在の遺産分割は本当に泥仕合になりやすい。誰もが、感情的になって論理破綻しながら罵りあうリスクを秘めている。仲の良かった兄弟であっても、それは何の抑止力にもならない。それよりも事前の準備を怠らないことだと、筆者は提案したいのだ。  なお、先ほどのケースの後日談。話がまとまった1年以内に、なんと三姉妹のそれぞれから個別で相談の連絡を受けた。 「3人で相続するアパートを“独り占め”する方法ってありますか?」<文/古川博之進>タワマンに住む会社員。不動産業、マンション理事長の経験を元に主に不動産業界のテーマを執筆。年100回開催経験から合コンネタも扱うが、保護猫活動家の一面も持ち合わせている。
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