更新日:2023年12月10日 12:37
ライフ

母の財産を狙う“兄の嫁”が大暴走。録音されていた「衝撃的な発言」で立場が逆転するまで

 世の中に老後の心配が尽きない人は多い。だが親族との関係性によっては、心配の範囲は死後までおよぶ。 「田舎なので都会に比べると微々たるものですが、財産がありました。私は生涯独身で過ごしてきたんです。それに、親族の関係性があまり良いとは言えないものですから、私が死んだあとのことが心配でしてね」  そう不安を口にする増田篤子氏(仮名)は、齢80に差し掛かろうとしている。背筋がすっと伸び、深みのある色合いの和服を纏う着姿は、まさに淑女。婚姻歴もなければ、子どももいない。10年以上前に退職するまでは、看護師として勤めていた。  増田氏には数名のきょうだいがいたが、この10年でほとんどが亡くなっている。もしも自分が死亡すれば、きょうだいの子どもたち――つまり甥や姪が遺産を争う将来が目に見えているのだとため息をつく。
大自然

増田さん(仮名)の家から見渡せる風景。地平線の奥まで大自然が広がっている

心配の言葉も「遺産分けて」に聞こえる

数年前から腎臓の数値があまりよくないんです。田舎ですし、病院関係者が親戚に多いから、そういう情報が漏れるんでしょうね。これまで10年以上付き合いのなかった甥や姪から、『調子よくないみたいだから家に行こうか?』といった電話の嵐です。額面通り受け取れば心配の言葉でも、『遺産分けて』に聞こえるんですよね」  そう聞こえるのには、明確な理由があるのだ、と語気を強める。  増田氏の父親は公務員だが、先祖は地元の大病院を代々経営していた、いわゆる名士の系譜。当時も一族で病院運営にあたっていた。地方とはいえ邸宅の敷地面積は相当広く、金融資産だけでもかなりの金額がある。  増田氏本人は、一介の看護師として現場に専念した職業人生だった。後述の親族同士のいざこざから、一族の財をほぼ一手に引き受ける形になった。

軋轢の発端になった兄嫁の存在

 だが人生の“終焉”が見え始めたいま、相続する相手のいない増田氏は、財産を狙う親族の影に怯えている。 「話はかなり前に遡ります。私には10歳以上離れた兄がいたのですが、兄と兄嫁の結婚が軋轢の発端でした。  兄嫁の実家は地元でも治安のあまりよくない地方で有名で、また兄嫁本人も素行が悪いことで知られていました。兄は世間知らずな人ですから、両親の心配をよそに、とっとと結婚を決めてしまったんです。  現在でこそ恋愛結婚は当然ですが、戦後すぐの田舎ではあまり考えられないことでした。勘当などの話もあったものの、結局、両親はしぶしぶ承諾して兄夫婦を住まわせることにしました」
次のページ
育児も仕事もせず、遊び歩く日々…
1
2
3
4
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ