結婚式の主役は新郎新婦だが、両親や親戚にもスポットが当たりやすい。大人になると親戚が一堂に会することは少なくなるので、親戚にとっても重要な行事になってくる。
写真はイメージです(以下同じ)
しかし、血縁というのは時にいらぬ争いを生んでしまうこともある。近親憎悪とはよくいうが、許せないことも増えるのだ。
親世代のケンカが、子世代を巻き込んでしまった最悪の結婚式
幸せな結婚式を予定していたのは東幸久さん(仮名・26歳)。学生時代から付き合っていた彼女との交際期間は、今年で5年目だった。
「彼女と結婚することになり、式を挙げようとなった時に、まず最初に障壁として気になったのは、ウチの親戚関係でした」
障壁とは、具体的にどのようなことだったのか。
「父方の兄弟たちの中で“祖母相続の分与”をめぐって確執がありました。祖母のことをずっと面倒見てきたのはうちの両親でしたが、いとこの両親たちが今になって手伝うと言ってきたとか、祖母の遺産を誰がいくら相続するか、とか」
「イヤな話だとは思っていましたが、別に僕には関係ないというか、子世代には関係ないと思っていたんです。僕自身はいとこたちとも仲良くしていたので、ここで変な雰囲気にするのもイヤで…。両親にも『いったん遺産のことなどは忘れて』と説得して、親戚たちにも式に参列してもらうことになりました」
たとえギクシャクしていようが、子世代の晴れ舞台。普通に考えれば、その場だけでも和やかなムードにするよう、務めるべきである。
「親戚やいとこの両親たちも、兄弟間の確執こそあれど、甥としての僕は可愛がってくれていたので、披露宴の間はいい雰囲気ができていました。僕も両親に感謝の気持ちを伝えられましたし、親戚たちもそれを涙ながらに祝ってくれました。
問題が起きたのは祝い酒も回ってくる1.5次会の最中でした。会場の隅から、怒号が飛んだんです。どうやら叫んだのは、僕の父でした」
もう想像がついてしまうかもしれないが、東さんは父親が怒号を上げた背景をこう語った。
「結婚式に親戚を呼ぶかどうか悩んだ時に、“
今日の主役は幸久だから”と、今は確執を忘れようと言って親戚を呼んでくれた父にも、来てくれた親戚にも感謝がありました。しかし、結局酒が回って、父と親戚はいつもの“遺産問題”で口論になってしまったんです。すぐに口喧嘩になった親戚と父は会場の外につまみ出されましたが、会場はざわついていましたし、何より妻の親類たちに心配をかけさせてしまったことが申し訳なかったです」
東さんはこの時、怒りよりも別の思いがこみ上げていたと話す。
「“僕らが主役”のこの結婚式で、父や親戚が我慢できなくなって、いつものように泥仕合をし始めたことが本当に悲しかったです。この場がその口論に適していないことは、誰でも分かることでしょう」
「それでも、自分の怒りに任せて僕たちの結婚式に水を差した父にも親戚にも、怒りというよりも呆れて恥ずかしい気持ちが大きかったです。式が終わるまで、なぜ我慢できなかったのか。酒で気を大きくして、思うままに怒鳴って。親戚をこの場に呼んだことは結局後悔になってしまったし、僕のことを考えてくれなかった父にも悲しさがこみ上げましたね」
1992年生まれ・フリーライター。ファッション誌編集に携ったのち、2017年からライター・編集として独立。週刊誌やWEBメディアに恋愛考察記事を寄稿しながら、一般人取材も多く行うノンフィクションライター。ナイトワークや貧困に関する取材も多く行っている。自身のSNSでは恋愛・性愛に関するカウンセリングも行う。
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