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相続放棄した北海道の山林が数千万円に? 価値がないと判断した男の後悔

 もしもあの時こうしていれば……。恋愛や結婚、就職、転職、金銭関係など、過去を振り返ってみれば、誰でも後悔のひとつやふたつはあるはずだ。やり直しはきかない。我々は“経験”から学び、今を生きねばならないのである。では、市井の人々が胸に抱える「人生最大の失敗・後悔」とは? そして、その出来事から得た教訓とは? 何かしら参考になる部分もあるかもしれない——。
山並み

写真はイメージです。以下同

「持っておいて損はない」とも言われている不動産だが、それは基本的に土地建物に価値がある場合。地方の山林などは地価の上昇のあまり期待できず、ゆえに処分したくても買い手がなかなか見つからないのが現状だ。  会社員の大田光郎さん(仮名・48歳)は、今から20年ほど前に父親が他界。その際、数百万円の借金があったため、遺産の相続放棄の手続きを取ったという。

広大な山林を所有するも借金を抱えていた父親の遺産を相続放棄

葬式「亡くなった後に知りましたが自営業だった親父は事業に失敗し、自宅も売却して返済に回していたんです。両親は私が幼いころに離婚しており、私は母に引き取られたため、親父とは近況報告を兼ねて年1~2回会う程度の関係でした。ただ、月々の養育費の振り込みは一度も期限を破ることがなかったと母から聞いていますし、借金で苦労しているなんて全然知りませんでした」  父親は離婚後ずっと独身で、父方の祖父母もすでに亡くなっていたので相続権があるのは太田さんだけ。父名義の預金口座には数十万円があったが、借金の額のほうがはるかに多かった。ほかには北海道にまとまった土地を所有していたがそこは過疎地。地元の市街地からもかなり離れており、資産価値がほとんどないと判断したそうだ。  そのため、離婚して相続権はなかったが母とも話し合って相続放棄を決断。確かに、この状況なら彼らの選択は当然のように思える。 「もともと農家だった祖父母が持っていた土地でしたが、半世紀も前に離農して札幌に引っ越しているんです。私も幼いころに何度か父の運転する車で行きましたが、何もないただの山(笑)。家はとっくに取り壊されていたし、お墓が残っているわけでもない。だから、処分すること自体には何の抵抗もありませんでした」

相続放棄した山林と同じ地域の土地が高値で売れたと聞いてショック

 このときは父親の葬儀を終えた後、早い段階で相続放棄の手続きを実施。そこでこの話はいったん終わったが、10数年後の2010年代半ば、仕事を通じて知り合った取引先の担当者から気になる話を耳にすることに。 「私が相続放棄で手放した山林のある自治体出身の方だったんです。年も近かったこともあって親しくなり、プライベートでもお酒を何度かご一緒する機会があったんですが、ある飲みの席で『最近、山を売って大金を手にした方が何人もいるみたいなんですよ』って言われたんです。彼の実家は農家なのですが父親が地主のひとりと面識があったらしく、『ウチも売っとけばよかったかなぁ』ってしみじみと語っていたそうです」
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もしも持ち続けていたら……
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ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。

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