倒産寸前で会社を辞めた男性。船が沈む前に逃げられたワケとは
サラリーマンなら、会社の倒産に巻き込まれるのは誰もが勘弁してほしいと思うところ。だが、会社もその情報を直前まで漏らさないため、大半の社員は発表した時点で知るケースが多いようだ。
ただし、倒産前に転職して難を逃れた人もいる。現在、情報サービス会社に勤める立花博人さん(仮名・43歳)もそのひとりだ。
「エネルギー関連のベンチャー企業に勤めていましたが、私が辞めてから1年と持たずに倒産。船が沈没する前に逃げ出すことができて本当に良かったです」
その会社に勤めていたのは28歳からの10年間。入社した当初は古びた雑居ビルの1室だったが、やがてオフィスは新しいビルのワンフロアに移転。社員の数も大幅に増え、倒産するほど業績が悪化しているとは夢にも思っていなかったそうだ。
「でも、友人だった経理担当の同僚にある日飲みに誘われ、そこで『詳しいことは話せないが、転職するなら早めにしたほうがいい』と言われたんです。しかし、理由を尋ねても守秘義務を理由に教えてくれず、ただ『察してくれ』とだけ。詳しい状況は分からなくてもこれだけ言われたら会社がマズい状況になっていることを容易に想像できます。それで友人の忠告を受け入れ、こっそり転職活動を始め、今の会社の採用が決まった時点で退社を申し入れました」
当時の年収は680万円。給料は悪くなかったが、立花さんが辞めた年のボーナスは急激な業績悪化を理由にほぼ全額カット。さらに辞めてから半年後には給料の振り込みが遅れるようになり、それから数か月で倒産してしまったという。
「最後まで残っていた社員は、ほとんどが給料未払いの状態だったらしく、国の未払賃金立替払制度を利用したみたいです。ただ、この制度で補償してくれるのは給料の8割までで全額じゃない。それに手続きには書類をいろいろと用意しなければならず面倒ですし、そこから審査を経てお金が振り込まれるまでには時間もかかります。突然職を失って仕事も慌てて探すことになるので精神的にもキツいでしょうし、あのとき友人の忠告を聞き入れて正解でした」
在職中は友人に言われるまで会社が経営危機だと思っていなかったそうだが、今になって考えてみると倒産の前兆ともいえる小さな異変はいくつもあった。
「まず以前は毎日会社に来ていた社長がたまにしか姿を見せなくなったことですね。あと、リース品の複合機がショボくなったり、社員が自由に使えるエスプレッソマシンも知らないうちに撤去されていました。ほかにも全額会社負担だった忘年会が2000円ずつ徴収するようにもなりましたね。倒産後に元経理の友人に会ったら『上から徹底的に出費を抑えろと指示されていた』と話していました。それで会社がヤバいと察して辞めた人もいたようですが、私はおかしいと思いつつも友人の一言がなかったら残っていたでしょうね」
東京商工リサーチの調べによると、2018年の負債総額1000万円以上の企業の倒産件数は8235件。リーマンショックに揺れた2009年に比べると、半数近くに減っているとはいえ、これは決して他人事ではない。
遠回しに会社の危機的状況を伝えてくる経理担当の同僚
退職後、会社は1年も経たないうちに倒産
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ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。
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