雑学

反グローバリズムを望んでいるのはアメリカ国民自身であるという事実

なぜマスコミはトランプ大統領誕生を予測できなかったのか?

<文/佐藤芳直>

 ほとんどのマスコミがトランプ大統領の誕生を予測できなかった。大統領選挙開票日当日のアメリカ時間の昼過ぎまで、ほぼ誰も――。

反グローバリズムを望んでいるのはアメリカ国民自身であるという事実

米ペンシルベニア州ハーシーで演説するドナルド・トランプ次期大統領の支持者たち。(2016年12月15日撮影)

 私の師匠の故舩井幸雄先生はこんな言葉を遺されている。「予測が外れるということは、考え方が根本から間違っているか、自分たちが知らないところで大きな変化が起こっているかである」

 考え方が根本的に間違っていたということがマスコミにはあっただろう。社説でクリントン氏支持を表明したNYタイムズ紙に、公正な選挙予測などできるはずはなかった。

 さらに彼らは、目に見えない変化の大きなうねりの存在にも気付かなかった。マスコミにはアメリカ国民の絶望感が見えていなかった。

スーパーマーケットが「ローカル」をウリにし始めた2011年


 筆者は年に数回、アメリカを訪れるのだが、6年ほど前に訪れた時に、次のような変化に気付いた。アメリカのスーパーマーケットで掲げられているスローガンは、それまで「グルメ」「オーガニック」「ダイエット」「ディスカウント」という表記が中心だった、ところが2011年前後を境に、多くのスーパーマーケットが「ローカル」を掲げるようになった。

 なぜ、ローカル、地域こそ大事という発想にアメリカが変わったのか。その原因は、2008年のリーマンショックにある。

 「アメリカンドリーム」という言葉に象徴されるように、アメリカ国民は、「富の追求」ということを一つの大きな縁として集まった人々である。富を求めるのであれば、彼の地が最も求めやすいと思い、移民してきた人々によって作られた国、それがアメリカである。

 しかし、リーマンショックが起こった時、「富の追求」というアメリカ国民の縁には、資本家でない人間は含まれていないことを、国民は悟った。首を切られ、職を失い、かといって何が保障されるわけでもない、健康保険もない、最低賃金も上がらない。国は自分たちの味方ではなかった。国縁はすでに失われていたのだ。

 人間は何かの「縁」に頼らなければ生きていけない。縁を大切にする日本人だけでなく、アメリカ人も同様である。自由と平等、豊かさを求心力に多様な民族が集まったアメリカの国民にとって、国の縁が中核だった。しかし、実はそんなものは消えていた。それに気づいた時、アメリカ国民は頼るものがなくなった。

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東日本大震災がアメリカ国民に精神革命を引き起こした

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