学校の教師がモンスターペアレンツに悩まされているといった話はよく聞くが、それは学習塾でも同じ。都内にある有名私立の中高を専門とする受験塾。ここではモンスターペアレンツが増長し、現場の講師は困惑しまくりだという。
成績下位の生徒にカンニング疑惑も、その親が怒鳴り込んできた
「私は数学と英語を担当しています。塾講師歴は5年目に突入しました」と語る石塚真人さん(仮名・40歳)。

写真はイメージです(以下同じ)
「授業のための予習は苦にならないし、教えることに対してやりがいも感じています。でも、とある生徒のカンニング疑惑が生じた時に、モンスターペアレンツが騒ぎ出したんですよ」
塾で行ったテストで、全国模試でベスト5に入った女子の後ろの席に座った成績下位の男子がいた。すると、彼の偏差値が40から70と、突然30もアップしたのだ。この結果にカンニング疑惑が浮上し、講師室ではもっぱらその話題で盛り上がったという。
「直接注意すると角が立つので、次の模試の際に、成績優秀者と離れた席に座らせたら、生徒の父親が怒鳴り込んできたんです。『塾は自由席のはずですよ。それなのにうちの子だけ自由を奪われて理不尽ではないですか』ってね」
そこで父親にカンニング疑惑を伝えると「カンニングをやったというなら、証拠映像を見せてほしい」と詰め寄ってきた。
「『教室にカメラを設置していないから映像はありません』と伝えると『証拠がないならカンニングしたとはいえない』って息巻きました。そこで『前の席の優秀な生徒と答案が全く同じだったんですよ』と疑惑の理由を伝えると、今度は開き直ってしまって、驚くべき屁理屈をまくしたてたんです」
父親は「優秀な生徒と答案が全く同じというのは、全く素晴らしいことだ」とあくまでも自分の子供がカンニングしたという事実を認めなかった。しかも「ビジネスの世界も結果が全てです。素晴らしい結果を出した我が子に拍手をすべきでしょう」。なんと子供を称賛することを強制したのだ。

そこで石塚さんが教室長に相談して、今度は教室長から父親に事情を説明した。すると「結果を出した息子を怪しんで監視するなど、精神的プレッシャーを与えるのは不当です。うちの子がテスト受験アレルギーになったら、どう責任を取ってくれるんですか」。こう声を荒げながら一方的に攻め立てただけでなく、塾の経営者に直訴すると脅したのだ。
「株主総会問題にしてやる。大学の同級生に週刊誌の編集者もいますよ。上場企業なのに株価にも影響出るような不祥事を出して良いのですか」
これには教室長も黙り込んだ。成績下位生徒の父親に負けてしまった形で、席を自由に座ることを許すことになった。
「和解した形になりましたが、納得できませんでした。そこで成績優秀な生徒にこっそりとカンニング疑惑を教えたところ、その生徒は例のカンニング男子の近くに座らないようにしてくれました」
結局、成績下位の生徒の偏差値は元に戻った。すると今度は「塾ぐるみでうちの子の頑張りを阻んだ」と意味不明のクレームが。石塚さんはじめ、塾の講師たちがうんざりしていると、今度は別のモンスターペアレンツが理不尽な要求を突き付けてきたのだ。