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SNSで保護者とのやりとりに疲弊する教員たち「いっそ禁止してほしい」

 教員のわいせつ事案が相次いだことを受け、3月1日、静岡県教育委員会は教員と生徒が私的にSNSでやりとりすることを禁じる方針を明らかにした。違反した場合は懲戒処分の対象になるという。そんな中、現場から「そっちだけじゃない」という声も聞こえてくる。 「わいせつ事件はその教師の個人的な問題が大きい。どうせなら、教員と保護者がSNSでつながることの方も禁止してほしい。必要以上に保護者とのやりとりを求められ、奨励すらされているように感じる」  関東地方の公立小学校教諭・野口紗香さん(仮名・30代)が嘆くのは、この10年ほどで、保護者とのやりとりが格段に増えてしまった現実だ。保護者と教員が気軽に連絡を取り合える、というのは一見すると「良いこと」である。いったい、どういうことなのか。

保護者とのやりとりでプライベートを奪われる教員たち

教師

※写真はイメージです(以下同)

 じつは、あまりに密なやりとりを求めてくる保護者も少なくなく、教員のプライベートにまで侵食してくるのだという。 「保護者さん同士でSNSグループを作る方がいらっしゃるのは知っていましたが、そのグループから飲み会に誘われたのがきっかけで、頻繁にお声がけしていただくようになりました。最初は良かれと思って行ったのですが……いまは正直、苦しいですね」(野口さん、以下同)  毎週末のように「お呼ばれ」があり、断れなくなってしまったという野口さんには、苦い経験がある。 「先生が贔屓している、と生徒に言われたんです。私のママとは遊ばないのに、誰々ちゃんのママとは遊んでいるって。あっという間に親御さんの間で噂が広まったようで、それが子どもたちにも伝わっていました。弁解しようにもなす術はなく、すぐに教頭に呼ばれて叱責されました」

「いっそ完全に禁止してほしい」

 後日判明したことだが、野口さんを頻繁に誘っていたとある生徒の母親が、野口さんら一部教師と何度も飲みに行っていることを別の生徒の母親に「自慢」していたのである。  自分の子どもの方が教員に目をかけられている、などといった親同士の「マウンティング」の取り合いかもしれないと野口さんは振り返る。 「以降、皆さんに謝罪して、飲み会などのお付き合いをすることは止めましたが、ギクシャクは残ったまま。それでも“私とはこっそり”と言って、連絡してくる方も少なくありません。ちょうどいい付き合い方、距離感がわからない。いっそ完全に禁止にしてほしい」
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寝る間も惜しんで保護者と「コミュニケーション」
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新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。

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