恋愛・結婚

人気の女性YouTuberも逮捕。数千万円稼ぐ「わいせつ動画」配信者を警察が狙い撃ちした理由

なぜ被害者がいないのに犯罪となってしまうのか

「AV倫理機構」理事の河合幹雄氏は、「警察が『公然わいせつ』を摘発するとき何を見ているかというと、社会的影響です。いくら稼いで何人が見たのか、と。もともと警察は、過去にFC2の経営者を逮捕したように、ずっと動画配信会社そのものを叩きたいと考えていました。そんなときにライブ配信で稼いでいる利用者を見つけたので、逮捕したということのようです」と語る。  さらに、河合氏のもとには、「芸能人をかたる動画などを配信して、視聴者を惑わすようなユーチューバーを取り締まりたい」という話も伝わってきていたという。この2つが重なって、女性ユーチューバーらが“見せしめ”になったのではないかとみている。 「警察関係者と話していると、『すでに性表現のある雑誌は制圧した。AVは自主規制の取り組みが進んでいる。残っているのは、児童虐待とサイバー空間の問題だ』というのが彼らの今の認識です。今後もネット関連の摘発は続くでしょう」(河合氏)  公然わいせつ罪は「被害者のいない犯罪」といわれる。表現の自由を守るNPO「うぐいすリボン」理事の荻野幸太郎氏は、ポルノ的な動画を配信する海外の老舗ライブ配信サイト「CAM4」をしばらく前から観察していた。 「CAM4は、業者が介在するアダルトビデオやライブチャットとは異なり、基本的には被写体が自分で配信するスタイル。強要や搾取の問題は起きにくい。無料で配信も視聴もでき、視聴者は気に入ればチップを贈ったり、一対一で視聴するときには個人間の交渉で料金を決めることもあります」  このサイトでは世界中の人が発信しているのに、日本人の配信は極端に少ないという。  海外発信でも日本人が無修正で性器を露出すれば犯罪だ。自分でモザイクをつけるのも難しい。だが、出たい人が出て、見たい人が見ているだけで、どこにも被害者はいない。なぜそれが犯罪となるのか。一方で、モザイク処理した業者だけが市場で保護される――。荻野さんはそんな疑問を語る。 「モザイクでAV出演者の人権問題は解決されません。だとしたら、モザイクはなぜ必要なのでしょうか? 害された『社会的法益』とは何なのでしょうか」  社会的法益とは刑法上の考え方で、社会的秩序を守るためのもの。セックスワーカーとして働く人々の安全と健康に関わる活動を行う「SWASH」代表の要友紀子氏は、こう語る。 「世界的にはAV女優もセックスワーカーも、性的なことを自分で表現し、売る時代になっています。それによって自分がオーナー兼プレイヤーとなり、中間搾取をなくすことができる。しかし、日本では『わいせつ』の概念がある限り、誰にも搾取されずに性表現をすることができないのです」 【河合幹雄氏】 ’60年生まれ。桐蔭横浜大学法学部教授(法社会学)。法務省矯正局の「矯正処遇に関する政策研究会」委員、警察大学校嘱託教官 【荻野幸太郎氏】 ’80年生まれ。同性愛者。NPO法人うぐいすリボン理事。国際日本文化研究センター共同研究員。関心分野は非営利組織論、表現の自由 【要 友紀子氏】 ’76年生まれ。セックスワーカーとそのサポーターをメンバーにするSWASH代表。著書に『セックスワーク・スタディーズ』(日本評論社)ほか 取材・文/長岡義幸
1
2
おすすめ記事
この記者は、他にもこんな記事を書いています