死刑囚・林眞須美の夫「21年目の告白」 和歌山毒物混入カレー事件
――事件直後は妻を疑ったこともあった。「お前やったんか?」と詰め寄ったこともあった。しかし、「『何でそんな1円にもならないことをせなあかんの?』という眞須美の即答に妙に納得した」という。一方、「ヒ素は自分で飲んだ」という主張は林眞須美の控訴審で健治氏自ら証言している。しかし、妻を庇うための嘘と退けられた。こうして事件前からヒ素を盛っていた林眞須美像がつくられたという。
健治氏:「眞須美でなければ犯人は誰なのか?」ということ。ここからはあくまで私の推測ですが、当時ウチの近隣では複数の飼い犬が青酸化合物を混入された毒物で殺されるという事件が相次いだ。カレー事件も、発覚当時は「青酸カレー事件」と報道されたやろ。食べ残しのカレーから青酸化合物が検出されたからやけど、そのことはうやむやのまま捜査対象から外れた。犬を毒殺した犯人はなぜ捜査されなかったのか。そこが、真犯人解明の肝だと思っている。
あの当時、ウチから少し離れたガレージにヒ素があったことを知っていたのは複数いた。さらに当時の和歌山では、ちょっとした農家なら誰でもヒ素は簡単に手に入ったからな。ヒ素を1000倍に薄めて噴霧すると、みかんの甘味が増すんですよ。
家宅捜索でウチの台所のシンク下から「白アリ薬剤」と書かれた容器に入ったヒ素が見つかって、それがカレーに混入したものと一緒とされたけど、そんな容器を家族の誰も見たことはなかった。容器に誰の指紋もなかったしな。そもそも、あれだけ騒がれていたら、そんな証拠を残しとく犯人なんかおらんやろ。
――林家には事件当時、中学3年生の長女に、中2の次女、小5の長男、4歳の三女がいた。彼女らは、殺人犯と前科者の子供という十字架を背負って、その後を生きてきた。事件については熱弁する父も、子供の話になると歯切れが悪い。
健治氏:子供たちには辛い思いをさせて本当に申し訳ないことをした。長女の顔も次女の顔も、もう何年も見ていない。昔は「お父さんのせい」と面と向かって言われたこともあったな。ただ、息子は今では私の代わりにマスコミの取材を受けることもあるし、三女もフラッと正月に顔出して、私にお年玉をくれることもあるんや。本当にべっぴんさんでな。優しいコに育ってくれたと思う。
今年に入って次女からは十数年ぶりに電話があってな。「お父さん、本当にあの事件ママがやったと思ってる?」と短い時間やったけど、少し事件のことを話した。眞須美の面会に行っているのは、私と息子だけで、娘たちは顔を出してないみたいや。
――事件の話に戻せば「今年は大きな動きがあるかもしれへんな」と話す健治氏だが、「再審に影響が出る」として多くを語らず。代わって父と共に無罪を訴え続ける息子の浩次氏(仮名)が、事件の真相を紐解くカギについて語ってくれた。その詳細は後日更新予定。
殺人犯と前科者の子供という十字架
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