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鬼才・岡村靖幸、3度の薬物逮捕でも愛されるワケをその軌跡から読み解く

2000年代:覚せい剤取締法違反で3度の逮捕、心身ともに不安定な時期?

 2000年代初頭、引き続き楽曲提供やトリビュートアルバムに参加するなどの活動をしていた岡村。だが、ファンにとって青天の霹靂とも言える事件が起こる――2003年1月に覚せい剤取締法違反で逮捕され、執行猶予付き有罪判決が下されたのだ。このとき、電気グルーヴ・石野卓球とのユニット『岡村と卓球』名義でのシングル、アルバムリリースの予定がされていたが中止に。その半年後、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』のステージで活動再開した。
はっきりもっと勇敢になって

3度目の逮捕の半年前に26枚目のシングル『はっきりもっと勇敢になって』をリリースしている(画像は『はっきりもっと勇敢になって』ジャケットより)

 しかし、2005年7月に同罪で2度目の逮捕。執行猶予期間中の再犯ということで、懲役1年6ヶ月の実刑判決が下された。出所後の2007年、小林武史主催の音楽イベントにて復帰を宣言するも、翌年2008年に3度目の逮捕。懲役2年の実刑判決を受け、またも服役。  3度目の逮捕の際、初公判の場で「プレッシャーに負けて覚せい剤に手を出してしまいました」と供述している。さらにこの頃は体型にも変化が現れており、現在と比較してかなり太っていたようだった。やはり精神的に追い込まれ、不安定だったのかもしれない…。

2010年代:完全復活! 若者にも支持される唯一無二のアーティストへ

 2010年に放送された『モテキ』(テレビ東京系)で岡村の楽曲が取り上げられたことから、岡村世代でない若者の間でも急速に認知されることに。追い風が吹くなかで、出所後の2011年、過去に発表した自身の楽曲をリアレンジした2枚のアルバム『エチケット』をリリース。その後もコンスタントにシングルを発表し、年2回ライブツアーを行うなど、精力的な活動を見せている。
幸福

11年ぶりにリリースされたオリジナルアルバム『幸福』のジャケットは、現代美術家の会田誠が手掛けている(画像は『幸福』ジャケットより)

 2016年、約11年ぶりにリリースしたオリジナルアルバム『幸福』は岡村の完全復活を証明しているとも思える。収録曲は、『ラブメッセージ』に代表される初恋のような甘酸っぱさを帯びた多幸感溢れるラブソングから、持ち前の変態的リズムセンスが織り成す『ぶーしゃかLOOP』など、粒ぞろい。  また、近年は分野の違う表現者たちとも積極的に交わり、コラボ作品もたびたび発表している。2014年、Base Ball Bearのボーカリスト・小出祐介とコラボした『愛はおしゃれじゃない』を皮切りに、若い世代に人気のあるDAOKOと『ステップアップLOVE』を発表、KICK THE CAN CREWの楽曲にゲストボーカルとして参加するなど、常にアップデートを続けている。  ――鬼才・岡村靖幸が、激動の2000年代を経て音楽シーンに復活できたのは、その音楽的才能が広く愛されているからであろう。<文/A4studio>
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