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メンズヘアサロンのカリスマ・中村トメ吉に聞く、若者に支持される経営哲学

人気の秘訣は人と人とのつながりを重視すること

 “革命を起こしたい”。その言葉通り、GOALDでは他のサロンとは一味違う理念を掲げている。 「ビジネスとしてただモノ・サービスを売るだけでは需要は飽和しています。情報に溢れ、機械化が進むこの時代だからこそヒト対ヒトの心の付き合いを特に大事にしています。美容師は1対1でお客様と向き合える職業。せっかく月1回とかのいい距離感で会えるのだから、『この前のアレどうなった?』みたいな、スタッフと客という垣根を超えた関係性を築いて、髪型だけじゃなく生き方や考え方といった総合体なスタイルを提案してあげられるようにしたい。GOALDがメインターゲットとしている顧客層も高校生から28歳くらいですし、お客様の第二の家族というか、兄貴のような存在になれれば最高ですよね」  スタッフもそうした中村イズムをしっかりと体現している。このような取り組みが、GOALDの人気の下支えとなっているのだ。 「要はどれだけ本質とリアルを発信できるかだと思います。今はSNSを使ってどう仕掛けるかを考える時代だけど、今SNSを見ている人は目が肥えているから、『こいつら自分をよく見せるために必死だな』ってことくらいはすぐに見抜かれてしまう。だから僕たちはリアルな本質的アウトプットと、インスタ映えの様なSNSを使って自発的にアピールするんじゃなくて、店に来てくれたお客様をどれだけ満足させられるかだけを考えています。本当にいいものを提供し続けていれば、お客様が勝手にSNSで拡散してくれるはず。僕たちの軸を精いっぱいお客様に伝えて、それが溢れるように広まっていく。それが最善です」  実際に、GOALDで髪を切ったお客さんが、美容師と共に写った写真をインスタグラムなどでアップする様子は検索すればすぐに出てくる。それを見て、また新たな顧客獲得につながっているというわけだ。

今の若者には成功体験を積ませてあげる

 店舗の経営戦略もさることながら、中村氏は著書『若手を動かせ』を出版するなど、今の若者の動かし方についても熟知している。 「まずは仕事をやりたくさせることが一番です。『これをやれ、あれをやれ』とは言いません。目標は持たせますがもちろん数字にかかわるノルマ的な指令も出さない。自由にやらせて、認めることです。下から上がってきたものを否定したことは一度もありません。僕のところまで提案が上がってくるということは、ある程度ちゃんと考えた末のもののはずですからね。僕の仕事はそれを具現化するために、道筋とフレームを創り、後押ししてあげるだけ。もしそれがうまくいかなかったらGOを出した僕の責任ですから」  若者の自由な発想を殺すことなく、成功体験を積ませてあげることが最も必要なことだと諭す。 「僕は手柄なんかいらないし、なるべく自分で成し遂げたと思ってもらえるようにしてます。恋愛でもなんでも、求めすぎないことが大事なのと同じ。期待はしないけど、楽しみにして待ってあげる。スタッフには会社のためではなく、お客様のために、自分のためにやってほしいですね。それが自然と会社のためになります」 「見てないようで見てるくらいがいい」。若いお客さんとスタッフから支持される中村氏の考え方は、部下を持つすべてのビジネスマンの参考になるはずだ。
中村トメ吉氏

ラフで温かい佇まいが、若いスタッフに安心とやる気を与えているように感じられた

<取材・文/櫻井一樹>
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