更新日:2023年04月27日 10:43
スポーツ

波に乗ったら急成長、鬼のいぬ間にSG奪取 ’94年グラチャン・三角哲男<江戸川乞食のヤラれ日記S>

二度あることは三角(?)ある、三角があれば四度目も?

平成6年(’94年)7月3日 SG第4回グランドチャンピオン決定戦競走 12R 優勝戦 1 立山一馬 46歳 A1 大阪 2 三角哲男 27歳 A1 千葉 3 井上利明 52歳 A1 大阪 4 高山秀則 45歳 A1 宮崎 5 吉田 稔 37歳 A1 群馬 6 林  通 45歳 A1 岡山 (年齢・級別は当時・県名は出身地) 「なぁ、今節って住之江周年記念だったっけか?」 「言ってやるな。大駒がみんな消えちまったらしかたねぇだろ?」 「まぁそうだけどよ。ところで、昨日も今日もみんな信心深けぇのか知らねぇけど、みんなこぞって護国神社にお参りに行くレースが多くねぇか?」 「確かに。おかげで差しやらまくり差しがけっこう決まってる感じだな。イン天国住之江はどこへ行ったのだか?」 「そうなりゃ高山も無理して内側にこだわらねぇだろうな。いいとこ井上と三角が変わるか、林が6コース嫌って家庭訪問かな。134652か136452かな?」 「あと井上が欲張って1コースを立山と競れば、314652とか134652?」 「どっちにしても三角は6コース回りしかねぇ」 「とはいえ、6コースから4回も連対できるもんかねぇ?」 「わからんぞ? 若手って調子乗ったらおっかねぇからなぁ、それにいきなりSGとかじゃなくてちゃんとG1取ってからSG優出してる、上り調子ってやつだからなぁ」  そんな戯言を後目に、優勝戦のファンファーレが鳴る。人気はモーター上位の高山秀則が中心で、悲願のSG初優勝を42期にもたらせるか吉田稔の4=5、立山一馬のイン残しを期待した4=1。  進入は早々と2枠三角が6コースへ回り、3枠井上が1枠立山と1コースを競り、100m起こしを余儀なくされた31/4/652。3コースを確保した高山秀則絶好のカド位置につけた。そうなれば大多数の客は高山秀則の自在戦からのバック突き抜け、そう思ったに違いない。  しかし、そうはならなかった。  理由はわからないが、高山が起こしを完全にしくじり、ホーム水面に置いていかれた。あわや出遅れ返還寸前のコンマ98。2コース立山がまくりを敢行し、それにあわせる井上の二人がそのまま護国神社の方へと流れていく。高山の出遅れで隣どころか1マークまでがぽっかり開いた4コース林が差しを楽に決め、そのまま2艇の内側を突き抜け、林通3回目のSG優勝か? 誰もがそんな目で1周1マークの展開を見ていた。  そんな客の目を覚ます黒いカポック。
イラスト/ツキシモ

平成6年(’94年)のSGグランドチャンピオン決定戦では三角哲男選手が△ではなく◎印の抜きを披露した イラスト/ツキシモ

 林通も、最初から遅れ差しに構えていた吉田稔もまたターンマークを大きく外す旋回をしてしまっていた。林と吉田の最内をいちばん遅く旋回を始めた三角が、まるで先行艇すべてがターンマークを外すことがわかっていたかのような全速の最内差しを決める。  1周バックの時点では林も立山も三角が最内をついて伸びてきていることに気付かず、お互いを牽制しあうレースをしていた。それを横目に2マークを先取りする三角。2周ホームで立山をさばいた林だったが三角との一騎討ちをすることもできず、伸び型モーターだった三角に1艇身の差をつけられ勝負あり。  そのまま大きな問題もなく、三角哲男が6コースからの最内差しから林を2マークまでにケリをつけSG初優勝に輝いた。 12R 優勝戦 結果 1着 2 三角哲男 6コース .31 2着 6 林  通 4コース .37 3着 3 井上利明 1コース .32 4着 5 吉田 稔 5コース .36 5着 1 立山一馬 2コース .29 6着 4 高山秀則 3コース .98 連単 2-6 4950円 27番人気 決まり手 抜き 「ははっ、本当に三角がやりゃあがったな」 「よりによっていちばんいらないヤツ同士で決まるとは思わなかったぞ?」 「そんなもんだろう、高山がスタート遅れてなきゃぁあんな展開にはなんねぇだろうし、展開の利は林にあったはずなんだけどな」 「まぁとにかく、久し振りに関東の選手がSG強奪したんだからそれは素直に喜ばねぇとだぜ?」 「ああ、そういや確かに3年ぶりくらいか、前回誰だっけ?」 「今節何しにきたかわかんねぇ西田だよ」  勝つためのリズムというものが存在するのであれば、おそらく前年のG1初優勝から三角はそのリズムに乗ったに違いない。  G1は腕があれば取れるが、SGはそれに運がなければ勝てない、誰かが言ってた言葉だが、腕でG1を取りその腕を鈍らせることなく運を磨き、SG優勝を勝ち取ったことは間違いない。  優勝戦のレース内容が名勝負かどうか、という点に関しては各自異論があると思うが、SGの舞台で専門のアウト屋でもない三角が4回連続で6コースから競走を行い、優勝を含めた3勝2着1回という成績は、間違いなく腕そのものであったことは確かだろう。 ※平成22(’10)年度以前の話題につき当時の名称にて表記しております ※本文中敬称略
シナリオライター、演出家。親子二代のボートレース江戸川好きが高じて、一時期ボートレース関係のライターなどもしていた。現在絶賛開店休業中のボートレースサイトの扱いを思案中
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