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牝馬に襲いかかるG1馬、観客席に突進……平成の競馬珍レースベスト3

<平成ギャンブル名勝負第8回・競馬珍レース編>  平成の競馬を振り返る企画……として先日は「平成の名勝負」を振り返った。30年以上もの間競馬はほぼ休まず毎週行われていたのだから、プロ野球珍プレー好プレーでいえば30年分の好プレーを1時間にまとめるほどの難儀なことではあったのだが、改めて競馬は名勝負の宝庫だと再確認することができた。 【前回記事】⇒有馬記念のオグリ、ディープ三冠じゃない!競馬予想の達人が選んだ平成の名勝負  一方、珍プレー好プレーでいえば大半が”珍プレー”の放送となるように、競馬においてもいわば”珍レース”が数多く存在する。そこで今回は、平成30年余りの中から選りすぐりの、語り継ぎたい……というよりは知っていたらちょっと自慢できるかもしれない、思わず誰かに話したくなる、珍レースをご紹介したい。  それでは、私、TAROが選ぶ、平成の珍レースベスト3! まずは第3位から。

第3位 平成14年(’02年) ラジオたんぱ賞 勝ち馬:カッツミー

 馬券を毎週買っていると痛いほど感じることがある。本当に競馬というのは、出遅れや道中の不利など、なんと思い通りにいかないことが多いものかと。レース直後に諦めざるを得ない……そんなことも日常茶飯事である。そこでふと、野暮な考えが頭をよぎる。 「もし、最終コーナーの時点で馬券を買えたらどれだけ儲かるのだろうか」  実に浅はかな考えだが、もし仮に最終コーナーで馬券を買ってもまず的中することはできないだろうと思えるのが、3位に選んだ、カッツミーが制したラジオたんぱ賞(当時)だ。  当時、宇都宮競馬所属の内田利雄騎手を背に参戦したカッツミーだったが、スタートからなかなか進んで行かず、位置取りは後方。競馬中継の映像にもまったく入って来ず、次に映し出されたのは最終コーナーの中間地点、しかも騎手が必死に追うものの馬はズルズルと下がって行くシーンだった。この時点で恐らく、「もう無理だ……」とほぼ全員が諦めたはずだ。  だが、そんな状況でも人馬は諦めてはいなかった。直線の入り口で徐々にエンジン点火。直線の半ばではまだ後方だったが、各馬が激しい叩き合いを演じる中、最後の最後に画面に映り込んできたのがカッツミーだった。まさにごぼう抜き、テレビ画面の外からの追い込みだった。  伝説の追い込み……と呼ばれるレースは数あれど(例えばブロードアピールの根岸S)、多くはもともと力のある人気馬によるもの。しかしこの時のカッツミーは8番人気の伏兵にすぎない。そんな馬が見せた驚異の追い込みは、まさに歴史に残る珍レースと呼ぶにふさわしい一戦だった。

第2位 平成26年(’14年) アイルランドトロフィー 勝ち馬:エイシンヒカリ

 破天荒なレースぶりゆえに、逆に能力の高さを見せたのが平成26年のアイルランドトロフィーを制したエイシンヒカリだ。デビュー以来4戦4勝と連勝街道を突き進んでいたエイシンヒカリが、初のオープン挑戦となったのがこのレース。無敗馬ということで注目度は高く、単勝は1.4倍という断然の人気に支持された。  そして、レースも周囲の期待通り。好スタートからスイスイと逃げ、後続をどんどんと突き放していく。あのサイレンススズカを彷彿とさせるようなレースぶりで、誰もが楽勝を信じて疑わなかったはずだ。直線に入るまでは……。  ところが、“事件”が起こるのは直線に入って間もなくしたところだ。鞍上の横山典騎手が軽くGOサインを送ると、何を血迷ったのかエイシンヒカリは外ラチに向かって斜めに走り始めたのだ。持ち前のスピードをフルに発揮し、しかし向かう方向はゴールではなく、観衆の待つスタンド…。  さすがに異変を察知した場内からもどよめきが起こるが、それでも最後は3馬身半差をつけての完勝。直線入り口では最内にいたはずが、ゴール版を過ぎた地点ではほぼ外ラチ沿いを走るという、まさに想像の斜め上を行ったレースだった。  だが、そんな破天荒ぶりは大物の証でもあった。エイシンヒカリはその後紆余曲折あったものの、翌年の香港カップを制覇、さらに平成28年(’16年)にはフランスのイスパーン賞を制するなど、海外のG1を2勝する活躍を見せたのだ。ハチャメチャなレースぶりは能力の高さゆえ。また、個人的にはそんな”暴走”を無理に咎めることなくのびのび走らせた鞍上横山典騎手の騎乗にも拍手を送りたい。エイシンヒカリのキャリアの中で同騎手の騎乗はこの1レースだけ。天才と呼ばれる同騎手だが、やはり天才同士、通じ合うものがあったのかもしれない。
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1位のレースは5本の脚で馬が走った!
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勝SPA!
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