
鴻上尚史
人生で一回は、見ておきたかったアウシュビッツのこと
ポーランドに来ています。ワルシャワ大学の日本語学科の学生達相手に講演をするためです。
最初、この仕事を頼まれた時には、芝居の本番中なので断ろうと思いました。んが、「鴻上さん、希望すれば、アウシュビッツ、見れますよ」の一言で決めました。
人生で一回は、見ておきたい場所だと思ったのです。

で、『地球防衛軍 苦情処理係』はキャストとスタッフにまかせて(はい、今週末は大阪公演です。お待ちしてます)3泊5日の弾丸ツアーで、ポーランドに旅立ったのです。
入国審査では、美しい女性の検査官の前に立ったのですが、ニコリともせず、一言も口を聞かず、ただ、黙ってパスポートに入国のハンコを押されました。彼女は、すぐに、横にあるドアを開けました。が、パスポートをバッグにしまっている間に、ドアは閉まりました。「開けてくれませんか?」と頼むと、「ファスト! ファスト! ファスト!(急げ! 急げ! 急げ!」と怒鳴られました。
40ヶ国以上旅してますが、入国審査でこんなことを言われたのは、初めてです。ドキドキしました。
で、ワルシャワからその日のうちに、電車で2時間半かけてクラクフという街へ。ここからアウシュビッツまでは、車で1時間ちょっとです。
次の日、つまりは今日なんですが、朝7時半にホテルを出て、9時少し前にアウシュビッツに到着。
日本人で唯一、アウシュビッツを案内している公式ガイド中谷剛さんにお会いしました。
聞けば、中谷さんはポーランドに住んで30年ほど。公式ガイドになって20年ほどだそうです。
最近は、「ダーク・ツーリズム」と呼ぶのか、どんどんとアウシュビッツを訪れる日本人が増えているのだそうです。
いきなり、映画やドキュメントフィルムでよく見た「ARBEIT MACHT FREI」の文字が張り付けられた門が見えました。「働けば、自由になる」という、じつに嫌なインチキな詐欺の文章ですね。