更新日:2023年05月18日 16:09
スポーツ

惨敗のサッカー代表・森保監督。言葉のカラっぽさは進次郎ポエム並み

 U-23アジア選手権でサウジアラビア戦(1月9日)とシリア戦(1月12日)に敗れ、初の1次リーグ敗退が決まった23歳以下のサッカー日本代表。東京オリンピックで金メダルを目指すなか、まさかの結果に騒然となった。日本サッカー協会の関塚隆技術委員長は、森保一監督(もりやす・はじめ、51歳)の続投を明言したものの、不安と不満がくすぶり続けるまま、オリンピック本番を迎えることになりそうだ。
プロサッカー監督の仕事 非カリスマ型マネジメントの極意

森保監督の著書『プロサッカー監督の仕事  非カリスマ型マネジメントの極意』(カンゼン)

 煮え切らない戦いぶりに拍車をかけているのが、森保監督の言語力だ。キャッチフレーズになる気の利いた言い回しもないかわりに、屈折したなりの含蓄があるわけでもない。決して口数は少なくはないし、語り口はていねいなのだが、致命的に中身がともなわない。費やされた語句の数に見合ったメッセージが存在しないのである。  ここからは、そんな森保監督の“迷言”を振り返りたい。本当に、続投で大丈夫なのだろうか?

①話す前に整理しよう

2017年10月30日 東京五輪代表監督就任会見  開催国出場のため予選を戦わないことの不安要素を問われた森保監督は、こう答えた。 「もちろん予選がないところで、真剣勝負で勝ってチームが結束して、あるいは自信を持って、選手とチームがステップアップしていくことはあると思うけど、予選がないことをメリット、生かしてじっくりチーム作りしていきたいと思うし、予選がない部分、足りないところは、いろんなコーチ、指導者、西野技術委員長(筆者註・当時)と相談しながら、世界で戦っていくには、もう一つ殻を破って世界と戦っていくには、どういうところが足りないかという部分もトレーニングの中で生かして、強化試合もいろんなところでできると思うので、そういう中でどれだけ情熱を持ってやれるかだと思います。」  息継ぎもなしにうねうねと寄り道をした挙句、たどり着いたのは「情熱」の2文字。この調子でハーフタイムで選手たちに指示を出すのだろうか? この時点で力量を疑っておくべきだったのかもしれない。

②華麗なる責任転嫁

2020年1月12日 U-23アジア選手権シリア戦後 1-2で敗北 「やはり勝負勘というものを若い選手たちにはこれから培っていってもらえればなと思います。」  “お前らがだらしないから負けた”というメッセージも、言い方ひとつでポジティブなエールになる。とはいえ、結果の責任を全て負うのは監督だということもお忘れなく。

③進次郎風ポエムの原型

2018年7月26日 A代表監督就任会見 「今のままではいけないと思います。だからこそ、日本は今のままではいけないと思っている」  この発言でポエマーとしての評価を得た小泉進次郎環境相(38)。だが、森保監督は小泉大臣よりも一足先に同様の作風を確立していたのだ。ロシアW杯を経て、日本サッカーの現状を問われた際の発言を見てみよう。 「すべてのレベルアップをしていかないといけない。個のレベルアップはもちろんやっていかないといけないし、日本の良さである部分もすべて磨きをかけてレベルアップしていかなければならないと思っている。」  代表監督たるもの、どんなにしゃべることがなくても空白を埋めなければならない。追い込まれた状況で、ぜひとも参考にしたい論法だ。

④形骸化する「反省」と「成長」

2019年12月18日 E-1選手権対韓国戦後 0-1で敗戦  スポーツである以上、勝ち負けはつきものだ。だが、敗北のコメントがテンプレート化しているのが、日本サッカーの気味悪い点だろう。森保監督も例外ではない。 「相手に余裕を与えてしまったところは反省しないといけないし、今後の選手の成長、チームの成長につなげていければと思う。」 「経験の浅い選手には次の成長につなげてほしい。選手ができなかったということは、私の伝え方というところで監督として反省しないといけない。」  大安売りされた「反省」と「成長」からうかがえるのは、他者からの批判やツッコミを遮断するディフェンシブな自己愛なのではないだろうか? “自分たちのサッカー”が揶揄される背景には、こうした脆さがあるように思えて仕方ない。

⑤「その意味では」の「意味」が不明

2019年3月23日 キリンチャレンジカップ対コロンビア戦後 0-1で敗戦  何でも言ってみればいいというものではない。 「最少失点で抑えながら、攻撃の部分で得点できなかったという試合ではなかったと思います。その意味では、1点を奪っていけるようなクオリティをもって、次の試合を戦っていこうと言いました。」  早急に日本語への翻訳が必要な文章だ。  東京五輪まで、泣いても笑ってもあと半年。進むも地獄退くも地獄といった感がなきにしもあらずの日本代表。その中から生まれる新たな語録に期待しつつ、生暖かく見守ろう。 <文/石黒隆之>
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4
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