現実離れした「とんでもないアイデア」を出し合う
――発想力を養う仕組みとは?
星:たとえば、アマゾンでは毎年の予算編成時、あるいは3か年プランを立てるとき、「Disruptive idea」を書く項目があるんです。Disruptiveとは、直訳すると「破壊的な」という意味。常識に縛られない現状を打ち壊すようなアイデアを、必ず書かなくてはいけないんです。
また、年に1回、
「イノベーションサミット」と呼ばれるワークショップが行われ、そこでもみんなで、破壊的なアイデアを出し合って、「もっとおもしろいことを」「もっと、とんでもないことを!」とディスカッションします。
たとえば、空飛ぶ飛行船を倉庫にして、お客さんのところにドローンで届けるとか、マンションの下に倉庫を作り、マンションの住人にはオーダーが入って5分以内で配送するとか。
――それは、楽しそうですね。
星:そうした一見、荒唐無稽なアイデアを出し合うのですが、そのとき、
相手の意見を否定しないというルールのもとに話し合いをするんです。そして、そのアイデアをどうやったら実現できるのかまで考えます。
各事業部で話し合われたものは、いくつかの意見にまとめられ、日本からの破壊的なアイデアとして本社に提出して、会社の目標になることもあります。
――日本企業ではなにかと「現実を考えろ」と言われがちです。
星:実現への現実的なアクションプランは、次の話。現実から考えてしまうと、発想力の高いひらめきは生まれません。イノベーションサミットでは、おもしろければ、実現不可能なものでもいいんですよ。大切なのは、自分たちで考える習慣をつけること。自由にわいわいとブレインストーミングすることで、連想からアイデアを膨らませることが目的ですから。
――会社があえて、そういう場を作っているんですね。
星:人間、そんなにできた生きものではないですし、毎日、みんな忙しいじゃないですか。自主的に頭を柔軟にさせろといっても無理です。だからこそ、
考える機会を強制的に作っているんです。
【星健一氏プロフィール】
星健一氏
1967年生まれ。JUKIおよびミスミで海外現地法人の社長などを務める。2008年アマゾンジャパンに入社、リーダーシップチームメンバーとなり、創世期~成長期の経営層として活躍。2018年アマゾン退社後は、
kenhoshi & Companyを設立し、セミナー講師、コンサルティングを手掛ける。著書『
amazonの絶対思考』