更新日:2023年08月29日 16:24
仕事

“月150万”荒稼ぎした不良高校生が、「未成年のうちに不良の世界から足を洗った」理由

 綺麗事に聞こえるかもしれないが、再起のきっかけさえあれば、人は変わる。  間違った方向へ人生が流れそうになったとき、自らの手にある“踏み止まれるもの”を自覚する者は幸福である。自分の人生をどう設計していくか。すなわち、私たちはどう生きたいか。一度道を外れて尚、現在は仕事で社会貢献する者たちの軌跡を追いかける。腫れ物だった彼らが這い上がるまでのドラマに、迫った。  
片口翔太氏

“不良時代”の片口翔太氏

「中学受験の失敗」で歯車が狂う

 有名資格予備校の講師として人気を集め、現在は司法書士事務所を開業する片口翔太氏の人生も紆余曲折に富んでいる。 「中学受験で第一志望校に合格できなかったことは、私の人生にとって大きな出来事だったと思います」  片口氏が受験したのは早稲田大学の付属中学校。知らぬ者のいない難関校だが、届かない目標では決してなかった。事実、氏の不合格は多くの受験仲間の間で驚かれるほどだったという。やむなく滑り止めに進学することになった氏に追い打ちをかけたのは、親の決断だった。 「早稲田大学の付属校は高校受験でも門戸を開放していますから、私は当然受験する気でいました。ところが、親は高校受験へのチャレンジを認めてくれませんでした」  校名の記載は伏せるが、滑り止めとはいえ名門校。両親が「そのままで良い」と判断したのも頷ける。だが片口氏は納得がいかなかった。 「小6の私は、親が困り果てるくらい荒れました。『こんな学校には進学しても意味がないから、公立中学に行く』とまで言い放ち、とうとう塾の先生が家に説得に来ました。大の大人が『お前を受からせてやれなかったのは、先生のせいだ』と泣く姿を見て、進学だけは決めましたが、内心では『もう一度早稲田を受験するチャンスがほしい』と思っていました」

警察の“不良名鑑”に登録されていた

 本格的に片口氏が荒れ始めたのは中学2年生の頃だ。夜は渋谷で遊び通して自宅に帰らず、朝登校しては机に突っ伏して寝る生活が続いた。中学生離れしたエピソードはどれも面白いが、なかでも警察の情報網の徹底ぶりを知ることになった話は、特に興味深い。 「通っていた中高は、文化祭になると女子高生を中心に多くの人が訪れるような人気校でした。すると他校の人間がその女子高生をナンパするために潜り込むようになったのです。たまたま私は参加していなかったのですが、仲間が『俺たちのシマで何をしているんだ』と他校の男子高校生を締め上げ、結果的に50万円の恐喝事件に発展しました。  ある朝、5時くらいに私の自宅に警察官がやってきて、『君の仲間がいなくなったから居場所を教えてほしい』と言うんです。私は心当たりもないので適当にやり過ごしましたが、その後、捕まって取り調べを受けた複数の仲間から『警察の取調室に“不良名鑑”みたいなデータベースがあって、お前の顔写真と名前もバッチリあったよ』と言われ、驚きましたね。虞犯(ぐはん)少年であっても警察はちゃんとリストアップしていますよ」
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中3の時に「不良界隈で権限を持てるようになった」
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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