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公演中止か再開か…悩む演劇界、それぞれの事情。宝塚歌劇は9日再開

演劇は「延期」が難しい。俳優やスタッフのギャラは?

 今回のような公演中止の場合には、通常の保険が適応されないと言われている。この危機、大企業や公共施設ならなんとか持ちこたえることができるのかもしれないが、小劇場で活動する俳優たち、スタッフたちには厳しい。  good morning N°5を率いる澤田育子さんは、もし彼女のユニットが公演中止になったら「だいたい3000人弱くらい集客の規模で、それを直前でこちらの判断で中止にしたら、800万〜1千万円の赤字です」と言う。これはスタッフやキャストにギャランティを中止分も払い、劇場キャンセル代も払う場合。劇場からのストップだったら劇場キャンセル代がかからない。「各公演、ギャラに対する考え方がまちまちですし、公演直前に中止と、早めに中止でも、だいぶ変わってくるように思います」と澤田さん。  やはり、俳優はステージで演じて初めて1ステージ毎のギャランティが発生する、という考え方と、1ヵ月の稽古時間の拘束も含めてという考え方とがあるようだ。大規模公演の場合は中止でもギャランティが払われるらしい、など噂が囁かれているとか。  澤田さんも3月に公演を控える身。3月27日(金)~4月3日(金)、新宿FACEで上演予定のハダカ座公演vol.2『ストリップ海峡』の稽古は粛々と続く。 「やっぱり演劇は、なかなか同じメンバー揃うことがスケジュール的に難しいので、劇場の空き状況もありますし、延期という選択が無いに等しいように思います。(ダメージは)経済的と精神的、どちらもですね。私も、中止の可能性の不安を感じながら稽古中ですが、 中止になったら、書いたのに行き場のない台本や、稽古したのに発表されない作品を思うと、虚しくてやり切れないですね。また、台本を書いた日々から含めてノーギャラになるかもという不安も恐ろしいです」と語る。  中止になったら、パンフレットやグッズの販売も見込めない。多くのイベントはグッズの売上も重要だと聞く。 「グッズは作品を観た劇場で1番売れますよね。グッズを作った場合、大量の在庫がリスクでもありますね」と澤田さん。本来売れるはずだったものの大量の在庫というのも考えるだけで泣けてくる。

下北沢「ザ・スズナリ」は公演を続行

 下北沢の劇場「ザ・スズナリ」では、3月7日、鵺的(ぬえてき)の「バロック」が開幕した。
ザ・スズナリ

ザ・スズナリ公式サイト

 スズナリでは、 <アルコール消毒液(エタノール80%以上)を場内7カ所(入口、男女トイレ、楽屋2カ所、スタッフルーム、事務所)に設け、こまめな手指消毒をおこなえるようにしております。> <給排気設備による換気をおこない、特に開場直前は、ロビーの窓とホールの屋外に通じる扉を全開し、大規模な換気をおこなっております。> <ロビーで加湿器を使用し、ウィルスがすこしでも不活性化しやすい環境をつくっております。> <現在、ザ・スズナリのスタッフに体調不良の者はおりません。今後、劇場スタッフにあきらかな体調異常がみとめられたときはすみやかに自宅待機とし、代行スタッフが対応いたします。> などウイルス対策を公式ホームページに掲げた。  鵺的では、当日券を劇場販売せず電話予約のみで対応し、<終演後の出演者との面会は、全公演にて中止とさせていただきます。>としている。あらゆる手を尽くし、公演存続しようとしている。それだけのことを急遽準備するのだって大変だ。公演中止になった公演のスタッフが、知らずに訪れた観客のために駅まで行って対応しているなんてこともある。  観客も、いくら楽しみにしていたとしても、体調が悪いのに無理して行くことは諦めるなど(ふだんの風邪とはわけが違う。風邪でもよくないけれど)、ひとりひとりが注意し合えば……と思うが、自覚のないうちに体内にウイルスを持っていることもないことはない。移動中の感染もあると言われるとなんとも言えないが、そうしたらもうイベントに限ったことではないわけで。  企業や公共施設などが関わっていない演劇は、中止しない方向で稽古を重ねているところが多い。SNSでは悲鳴や決意表明が散見される。他にも、コメントを求めた演劇人の方がいたのだが、微妙な状況なのでいまはコメントできないと返された。その気持もわかる。
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無観客上演して動画配信する動きも
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