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「スポーツジムは不要不急ではない」自粛営業するジム経営者の思い

 私の経営するジムは、緊急事態宣言発令後から5月12日時点では休業要請には従っていない。私が全責任を負い、細心の注意を払って自粛営業することに決めた。できる限り100%に近い安全性へと近づけるよう、国家資格である労働衛生コンサルタントにも相談し、助言を受け、すぐさま実行、改善している。今の環境ならば、クラスター発生の確率は相当低いはずだ。  政府が休業要請しているスポーツジムとは、大規模なスポーツジムのことを指していると解釈している。我々のような中小スポーツジムに関しては、会員の顔も声も性格も1人1人理解している。まったくもって不特定多数ではないのだ。特定少数である。ただ話をするためや、風呂に入るためだけのスポーツジムへの来館は不要不急だろう。しかし健康作りのためのスポーツジムへの来館は、けっして不要不急ではないと私は確信している。  オンラインレッスンも一時的なものであって、まだまだ現実のジムの方が優位に立てるに違いない。「今は家の中で運動してろ」というお叱りを受けるかもしれない。しかし私を含め、家の中ではなかなかやれない。続かない。YouTubeに溢れるトレーニング動画だけで健康作りを長期間できる人は、ごく少数だろう。場所の切り替えは重要である。ややもすれば、自粛して家に閉じこもっている間に違う病気に掛かってしまう。  実際の感染者数はまったく正確ではないし、地域差も大きいにしろ、感染者数を人口で割ってみると、ざっくりとした比率がわかる。(2020年5月12日現在) アメリカ 約135万人÷約3億2900万人=約0.41% 日本 約16000人÷約1億2700万人=約0.013%  統計上では、アメリカは1万人に41人くらい、日本は1万人に1人超くらいである。  SNSや報道を見ていると、まるで日本の人口の10%、つまり約1270万人が新型コロナウイルスにかかっているかのような錯覚を受ける。しかし現状発表されているのは約16000人(すでに8500人超が回復)。仮に日本の感染者数が100万人の感染者数になったとしても、いまだ人口の1%に満たない。  私のように異常に警戒して、帰宅してすぐに全身消毒しまくっているようなパニック野郎には、このようなデータは精神衛生を保つのに役立つ。反対に、まだ対策を取っていない人は、SNSやニュースなどの切り取られた報道を見て、もっと恐怖を感じてもいいのかもしれない。勇敢と蛮勇は似て非なるものだ。  自分もいまだパニック状態ではある。けれど3月上旬を頂点にして、徐々に落ち着きを取り戻しつつもある。どうせ自粛するならば、楽しく自粛しようと心がけている。営業すると決めたならば、「誰もかからない。誰にもうつさない」という姿勢を徹底して自粛営業したい。  ちなみに、自分がパニックになればなるほど、店舗は安全性を増していく。衛生管理をやり過ぎなくらい施すことになるからだ。ただただ冷静な対処を取るよりも、世間のパニック具合に寄り添うことで、顧客の不安を和らげることができる。  とにかく商売は、お客さまを不安にさせてはならない。’07年に創業して以来、常々それを意識して経営してきた。今回の場合、顧客の不安の多くは、「誰かにうつされないか」「誰かにうつしてしまわないか」である。私を含め、仮にジム内の誰かが新型コロナウイルスにかかっていたとしても、クラスターの発生をほぼ防げるような環境を作ってしまえばいい。だから今はやり過ぎくらいの対策を立てている。 消毒 うちの場合、ジムに入った時点で全員に手指の消毒or手洗いの実施を「必ず」してもらい、ジム内全員にマスクの着用を義務づけた。また、対人練習も一時休止し、会話も真正面からは避けて1m以上距離を置くようにお願いしている。換気環境も劇的に改善し(窓がなくてもサーキュレーターなどの設置で改善できる)、ジアマックス(次亜塩素酸水)を噴霧器で常時ジム中に拡散し、サンドバッグの使用前後にもジアマックスを吹きかけてもらい、サンドバッグも隣り合うことは避け、1つずつ間を空けて打ってもらっている。  とはいえ、独自に設定したこれらの新型コロナ対策ルールは徐々に緩和していく予定だ。本当にありがたいことに全会員がルールを遵守してくれている。そのおかげで、相当に高い安全性を提供できていると自負している。  ジムに来たくても来られない人たちの足を、再びこちらに向けたい。天岩戸に閉じこもった天照大神を誘い出すため、外で踊っているアメノウズメちゃんのような気持ちである。
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どんな選択をしてもどのみち傷つく
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