更新日:2023年05月24日 16:16
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伝染病も経済も人の生死の問題だ。一方だけ選ぶようでは、もはや政治ではない/倉山満

伝染病も経済も人の生死の問題だ。一方だけ選ぶようでは、もはや政治ではない

言論ストロングスタイル

国のトップが話せば話すほど、不安が増していくとはどういうことなのだろうか。「まだマシ」と自民党に任せ続けてきた自分たちを反省しなくてはならない 写真/時事通信社

 中国ウィルスは未知の病原体である。そして肺炎は自然治癒する場合もあるが、種類によっては不治の病である。  初動の段階で上手く対処していれば、これだけ清潔な国民と高度な医療体制である。世界各国が伝染病で苦しむ中、日本は羨望のまなざしで見られた国となったかもしれない。今でも人口当たりの死者数は、極端に少ない。  だが、ここまで種々の混乱が続いてしまい多くの人々がパニックになってしまった以上、「たかが風邪だ! 鎮まれ!」とは言えまい。大体、安倍晋三が何を言おうが、国民は不安になるだけだ。そこに小池百合子が輪をかける。現実には、それを言える信頼できる政治家がいない。  そしてコロナ禍によって、日本の医療体制は崩壊の危機にある。嘘だと思うなら病院に行けばいい。コロナ対応で他の医療に支障をきたしており、そもそも「コロナ以外で来るな」と言われる。  こうした状況に陥ってしまった今、何とか爆発的感染を防ぐために、外出自粛を求めるのはやむを得まい。事ここに至っては。ちなみに、このセリフを吐かざるを得ない時は必ず、事をここに至らせた犯人がいるのだが、今はそれを言う時ではなかろう。  医療従事者の立場からすれば、一定の期間を区切って、外国のような都市封鎖をして欲しいとの気持ちは当然だろう。だが、現時点で「死亡者100人」の病気の為に、経済全体を止めても良いのか。そこで政治の判断が必要とされる。いかなる専門家といえども明確なエビデンスなど出せない。では、どうするか?  一つは、「どうせ死亡者は増えまい。その為に経済は止められない」と開き直る方法だ。文明国でこれをやっている国はない。もう一つは、経済を止める。代わりに、莫大な補償を行う。こちらが文明国の方法だ。  では、我が国は如何か。都市封鎖を行える法制は無い。そこで政治家たちは「呼びかけ」を繰り返してきた。日本人は生真面目で我慢強いので、政治家の呼びかけに応じた。この「呼びかけ」に法的強制力はない。だから補償の義務もない。それでは、病気の前にお金が無くて生活ができなくなってしまう。伝染病は命の問題だが、経済も人の生死に関わる問題なのだ。どちらかをとって、どちらかを捨てるようでは、それはもはや政治ではない。  今この状況で肝心なのは、疫病対策を成功させる為にも、経済である。  経済の要諦は、マインドに働きかけることである。そもそもの慢性的デフレな時に、消費増税と今次コロナ禍である。デフレマインドは増幅されている。普段なら金融緩和がデフレマインドの打破には特効薬だが、多くの人々が疫病の不安に怯えている今、限界がある。たとえるならば金融緩和は輸血であり、今は輸血をしない訳にはいかないが、輸血だけでは限界がある状態なのだ。
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政府自民党は「貧乏人は死ね」と宣言したのだ
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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