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新型コロナは黄色人主体国家が仕掛けた戦争か?の疑問に佐藤優の回答は…

 “外務省のラスプーチン”と呼ばれた諜報のプロ・佐藤優が、その経験をもとに、読者の悩みに答える!

新型コロナは黄色人主体国家が仕掛けた戦争か?

新型コロナ★相談者★ ひろぴ(ペンネーム) 無職 男性 59歳  コロナウイルス感染についてです。コロナにも、蝙蝠由来型と欧米で猛威をふるまっている型があるという研究論文を読み、本来は「率」を考えるべきでしょうが、母数が不明な現在、白人主体国家と黄色人主体国家の死亡者数の大差から、黄色人主体国家が白人主体国家に戦争を仕掛けたのか? 第3次世界大戦と30年後に定義される可能性はあるのでしょうか。 ◆佐藤優の回答  今回の新型コロナウイルスによる肺炎が、黄色人主体国家が白人主体国家に仕掛けた第3次世界大戦と30年後に定義される可能性は、皆無です。この感染症には、人種に関係なく、人ならば皆罹る可能性があるからです。現時点で新型肺炎に対する治療薬はないので、対症療法で感染者の免疫力に頼るしか方法がありません。対症療法が行えれば、ドイツのように死亡率を1%程度に抑えることができます。  しかし、イタリア北部のように医療崩壊が起きると、10%以上になります。検査があまりなされず、統計も整備されていないサハラ砂漠以南のアフリカでは、イタリア北部や中国の武漢市よりもはるかに死亡率が高い状態になっていると私は推定しています。死亡率の高低は、人種に起因するものではありません。医療崩壊が起きているかどうかです。  ただし、不安心理の中でどの国でも人種主義的発想が出てきます。中国共産党中央機関紙の「人民日報」に掲載された、以下の論評が興味深いです。 =====  新型コロナウイルスによる肺炎が発生して以来、国際社会では団結・協力し、共に困難を克服するというメインストリームの声が日増しに高まっている。だが、一部メディアからは耳障りな声も度々上がっている。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)がその一例だ。同紙は先般掲載した論説で、新型コロナウイルスによる肺炎と戦う中国の政府と国民の努力を中傷する姿勢を示した。編集者は人種差別的色彩を明らかに帯びた見出し「中国は真の『アジアの病人』」までつけた。(中略)「大手メディアがこのような考えを示すことで、世界にさらに多くの恐れと焦り、そして中国人その他アジア人に対する一層の敵意を引き起こしうる。これは極めて有害で間違ったことだ」。  米カリフォルニア大学バークレー校のキャサリン教授のこの言葉は、同紙の行いの真の危険性を的確に指摘している。感染症に対しては、人種も国境も関係なく世界保健機関(WHO)の呼びかけるように団結して、共に戦うべきだ。人種差別を煽り、中国を侮辱する言論をまき散らすのは、感染症との戦いに貢献している人々を傷つけるだけであり、国際社会にパニックをもたらし、共同の努力を破壊するだけだ。(『手を携えて新型肺炎と闘う』132~133頁) =====
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黄禍論が存在するのは、実に嘆かわしいことです
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’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数

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