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PCR検査が少なくてもコロナを抑え込めた…台湾と日本では何が違う?

<文/野嶋剛:ジャーナリスト、大東文化大学特任教授>  日本では台湾との比較がしばしば語られたが、台湾のコロナ対策を検証してみると、単純な比較は容易ではないことに気付かされた。はっきりいえば、日本と台湾ではレベルが違うからである。

レベル1の台湾とレベル3の日本

羅一釣

2019年12月31日に、中国武漢市で原因不明の肺炎患者が複数出ているという情報を把握し、緊急レポートを作成した台湾疾病管制署副署長(当時)の羅一釣[台湾行政院提供]

 防疫に必要なのは、第一に水際で侵入を食い止めること(レベル1)、第二に侵入を食い止められなかったら、流行が小規模なうちに徹底的に検査・隔離を行うこと(レベル2)、第三に徹底的な検査・隔離が行えないほど感染が広がったら都市封鎖などで人の移動を少なくしてウイルスに感染の機会を与えないこと(レベル3)、である。  日本における新型コロナウイルス対策で、議論が今一つ噛み合わなかったのは、日本はレベル1とレベル2に失敗し、気づいた時にはレベル3に達していたという認識が必ずしも十分に共有されていなかったことが大きいように思える。  世界的にはあまり見られない「クラスター対策」によって日本的モデルの成功を導こうとしたが、それもうまくいかず、結果的に緊急事態宣言による社会活動の制限と「三密」の阻止という行動変容に頼って対応することになった。  一方、台湾の場合は、基本はこのレベル1とレベル2で対処が完了しており、都市封鎖的な行動制限を行う必要がないまま、「日常生活への移行」という次のステージに入った。  つまり、日本においては、レベル1はほとんど具体的に措置を講じる間もないまま、レベル2、そしてレベル3に突入してしまったので、レベル1とレベル2で止まった台湾とは、論点とするポイントがかなり違ってしまっている。

レベル2で抑え込んだ韓国の「K防疫」

 流行初期において、レベル1の水際で抑え込むことが望ましいのは言うまでもないが、このグローバルに人の移動が活発化した時代、四方八方から訪れるウイルス感染者を完全に防ぐことはかなり難しい。だから、レベル2の検査と隔離が重要になってくる。韓国では大邱市で一時、新興宗教団体「新天地イエス教会」による大規模感染が起きたが、大邱市の権泳臻市長は、当時の検疫をこう振り返っている。 「(信者全員の検査を)1か月以内に終えました。信者以外にも、重症化や死亡リスクが高い高齢者が入居する施設などでは症状が出ていない人にも先んじて検査を実施し、1日最大7000件近く、累計で10万件に及びました」 「これほど多くの検査をしなければ感染者数は急速に増えなかったはず。病床も十分にないなかでは検査を遅らせるべきだとの声もありました。ただ、世界のどこにも治療の教科書も薬もない感染症です。一刻も早く大勢の人を検査して隔離するしか方法はなかった」(朝日新聞、5月4日朝刊)  この方法が韓国の「K防疫」と呼ばれるスタイルだ。感染拡大が起きそうになったら、とにかく検査して感染者をあぶり出し、隔離し、ウイルスの拡散を抑え込むしかない。  これに対して、台湾はレベル1からレベル2に入りかけたところで抑え込んでしまったので、韓国のように大量検査によって力ずくで抑え込むまでもなかった。
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日本のコロナ対策は成功?失敗?
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なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか

①“攻め"の水際対策 ②ためらいなく対中遮断 ③“神対応"連発の防疫共同体  “民主主義"でコロナを撃退した「台湾モデル」の全記録!

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