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やっぱりテレワーク定着しない? “なし崩し出社”が始まった今、マジメに考えた

 当初は戸惑いも見られたが、現在「緊急事態宣言解除後もリモートワークを継続したい」という声は7割にも達する。しかし実情は、“なし崩し出社”が横行。果たして、新しい働き方は定着するのか?
やっぱりテレワーク定着しない

緊急事態宣言解除されて初めての朝を迎え、通勤客らが行き交うJR品川駅

やっぱりリモートワーク定着しない

 緊急事態宣言下において急速に拡大したリモートワークは、働く人々に「満員電車のストレスから解放された」「自分のペースで仕事ができる」という喜びや新しい発見を与えた。だが、リモートによる働き方を継続したいと声を上げる人が多いにもかかわらず、宣言解除後の6月になると、都心のオフィス街には一斉に人の姿が戻ってきた。いったい何が起こったのか。 「宣言解除後の今、どうしてもリモートワークが困難な社員以外も自主的に出社しています。僕はこのままリモートを続けたいと思っていたのですが……」  こう話すのは、都内の金融系企業に勤める皆川元太さん(仮名・34歳)。現在はリモートワークと出社を交互に織り交ぜた通勤スタイルになっているという。 「社内には『リアルなコミュニケーションが必要!』と部下を出社させている上司もいますが、まったく理解できません。でも最近は周囲が続々と出社し始めて……。僕も、なんとなく“行かなきゃな”という気持ちで出社しています」  組織・人事に関する調査を行うパーソル総合研究所上席主任研究員・小林祐児氏は、このような会社の空気に引っ張られて行かざるを得ない“なし崩し出社”についてこう分析する。 「5月の調査では、企業のおよそ7割のリモートワーク実施者が『コロナ収束後も継続したい』と回答しています。しかし緊急事態宣言解除後には、過半数以上の正社員が企業側からのアナウンスなく、自主的に出社しているという“なし崩し出社”の実態が明らかに。日本人の働き方とリモートワークの相性の悪さがこうした現象を生んだと考えられます。緊急事態宣言解除後の正社員のリモートワーク実施率は、4月中旬の27.9%と比較すると25.7%と2.2ポイントの減少。今後さらにこの傾向が続くことが予想されます」
やっぱりテレワーク定着しない

小林祐児氏

 逆戻りの要因は日本人特有の「同調圧力」に屈している部分が大きいようだ。小林氏が続ける。 「日本人の働き方はよくも悪くも“雑談”をベースにしている。それが、社内の廊下ですれちがったときや休憩時間、会議の前後など、今まで偶発的に起きていたコミュニケーションの場が、リモートワークによって奪われてしまった。これに孤独感や不安感を覚えた者たちが自発的に出社。それにより、リモートワークを続けたい人たちも『行きたくないけど周りが行っているから行かなきゃいけない』という気持ちになる。現状は、一部出社と一部リモートワークが混在する“まだらリモートワーク”状態と言えるでしょう」  このまま “なし崩し出社”が続きリモートワーク実施率が低下すれば、コロナ感染が拡大しない限り、多くの企業は方針を元に戻してしまうのだろうか。 「リモートワークをうまく回すには、プロセス重視の日本の働き方は相性が悪い。新型インフルエンザの流行や東日本大震災の際も一時的に導入率は上がりましたが、事態が収束した後は軒並み戻っています。今回もおそらくそうした傾向を辿るのではないでしょうか。将来的にリモートワークを定着させるには、企業側が“言語化”“計画化”“役割固定”など、ノウハウやルールを形式化・明確化させる方向に意識を変える必要があるといえます」(小林氏)
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「原則リモートワーク継続」にシフトした企業も
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