更新日:2023年09月15日 14:05
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「生まれたことを詫びろ」ブラックすぎる医療現場の実態。研修医の手取りは“5000円”、当直時は“39時間連続労働”も

〈限界です〉甲南医療センターに勤めていた若き医師は、そう遺書に書き残し命を絶った。来年4月からは「医師の働き方改革」が実施されるが、現場は依然として長時間労働やパワハラが横行しているという。その過酷な実態とは?

残業ではなく「自己研鑽」…39時間連続労働の医師も

ブラックな医療現場

高島晨伍さんの遺影を手に、会見に臨む母の淳子さん。この過労自殺については8月に労災認定された

 ’22年、神戸市の総合病院で働く26歳の医師が過労自殺し、今年8月に労災が認定された。亡くなる直前の残業時間は国の基準を大幅に上回る月200時間に上ったという。  厚生労働省の「医師の勤務実態調査(令和元年)」によると、時間外勤務が年960時間を超える医師は37.8%。こうした現状を受け、’24年4月からは医師にも時間外労働の上限規制が適用される「医師の働き方改革」が施行される。  これにより、一般の勤務医は年960時間、長時間労働が必要なポジションの医師でも年1860時間の時間外労働上限が設けられる。  しかし、こうした役所主導の改革がどこまで現場を改善するかは、疑問だ。

手取り5000円の研修医に、残業200時間の勤務医

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常勤医の週労働時間の区分別割合 ※『令和元年医師の勤務実態調査』をもとに編集部作成

 関東にある某病院で働く新井翔太さん(仮名・30代男性・勤務医)は「ほとんどの医師は、残業時間は無申告なので、厚労省のデータよりも長時間労働を強いられている人はもっと多いはず。そもそも日本はOECD諸国と比較しても圧倒的に医師の数が足りないので……」と指摘する。 「僕も週6日、7~22時の一日15時間勤務がデフォルト。さらに『当直』という夜勤が週に1回あり、その時は39時間連続労働になります。担当患者の要望があれば当然土日も出勤しますし、急患がいれば家にいてもオンコールで呼び出されるので、電話が嫌いになりました」  さらに業務だけでなく、医師としての知識・技能の習得や、学会での発表に向けた勉強は「自己研鑽」とみなされ、労働時間には含まれない。 「それなのに、大学を卒業したての研修医の立場だと、給料は雀の涙ほどしかありません。手取りが5000円の月もあり、週一の他院への出稼ぎバイトで月15万円ほど稼いでなんとかしのいでいました」
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パワハラ、暴力も横行して「もう限界!」の声も
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