仕事

ホストクラブからカフェ&農業へ。経営ピンチの転換で得たものとは?

―[コロナ禍と人生]―
 新型コロナウイルスの流行により仕事や住居の変化、起業・学業・結婚の中断、中には家族の死など人生計画を狂わされてしまった人々は数多い。彼らはその後、どうなったのか? 今後もコロナ禍収束の見通しが立たない中、その生活ぶりと価値観の変遷に密着した。
コロナ禍と人生

カフェスタッフは、週3回農作業を行う。採れたての夏野菜を使ったメニューが提供間近だ

ホストクラブ→カフェ・農業に転換で得たものとは……?

 営業自粛で多くの水商売がピンチに陥るなか、逆境をバネにしてカフェ営業を始めたホストクラブがあった。歌舞伎町にある「group BJ」会長のレオ氏に話を聞いた。 「ホストクラブが約2か月営業できず、経営を維持するためにはスタッフを解雇せざるを得ないと厳しい決断を迫られていました。最悪の手段を取る前にできることはないかと思案し、思いついたのがカフェでした」  5月初旬にズーム会議でスタッフに周知し、翌週にはカフェ営業を始動。豪華な装飾に囲まれたホストクラブの店内で、コーヒーやパスタを楽しめる目新しさは話題を呼んだ。 「お客さまの7割はホスト未経験で、店内の写真をSNSにアップするなど、コンセプトカフェのような楽しみ方をしていただいてます。売り上げは雀の涙でも、今までホストクラブに行ったことがない人にリーチでき、ホストは怖いというイメージを払拭できたことは大きな収穫です。お客さまは男子大学生や年配の方も来店しています」  カフェ営業には、人材育成の狙いもあったという。 「カフェのスタッフは、ホストクラブでマネジャーやボーイをしていた者です。バックヤードからプレーヤーに立ち位置が変わることで、仕事の幅も広がると期待しています。また、カフェの運営方法はすべて現場に任せていることもあり、指示待ちの姿勢から自主性が強くなったと感じています」  6月からはホストクラブを再開し、昼はカフェ、夜はホストとして営業。さらに都内の農園で農業にもチャレンジし、育てた採れたての野菜をカフェのメニューで提供する予定だ。スタッフ全員が農業未経験だが、7月には夏野菜を初収穫した。 「商売の軸が1つだけだと、不測の事態が起きたときに危機的状況になるとコロナ禍で痛感しました。それを教訓として、農業も始めたのです。今後は、本格的にカフェを事業化し、歌舞伎町が眠っている昼の時間帯の売り上げも伸ばしていきたい。こうやって七転び八起きでやっていけば、新たなビジネスチャンスに繋がると感じています」  価値観を転換し苦境の中から新たな境地を得たgroup BJの姿は、コロナ禍を乗り切るヒントになるかもしれない。 <取材・文/週刊SPA!編集部>
年収100万円で生きる-格差都市・東京の肉声-

この問題を「自己責任論」で片づけてもいいのか――!?
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