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全国市区町村の“自虐ポスター”。人が来ないから笑うしかない

姫路セントラルパーク:“日本一心の距離が遠い”と称する理由とは?

 兵庫県姫路市にある姫路セントラルパークは、サファリパークと遊園地が一体となっているだけでなく、夏はプール、冬はアイススケートが楽しめる複合型の娯楽施設。この姫路セントラルパークのキャッチコピーも、実に自虐的な文言だと話題になった。
姫路セントラルパーク

35周年記念の特設ページには驚きの仕掛けが(画像は姫路セントラルパーク公式ホームページより)

 そのキャッチコピーとは、「日本一心の距離が遠いサファリパーク」。2019年に開設された特設サイトではキャッチコピーにちなみ、大阪府から姫路セントラルパークに向かうのにかかる予想移動時間を打ち込むと、入力した数字に合わせてサイトの表示が変化する仕掛けが用意されている。  このキャッチコピーが生まれた理由は、姫路セントラルパークの認知度不足にあるという。実際の所要時間よりも長く移動に時間がかかると思っている大阪府民が多かったことから、その認識の溝を埋めるためにあえてこのようなキャッチコピーを掲げたのだとか。  今年の春には、3月に生まれたばかりのチーターといった、園内の動物の赤ちゃんを特集した「日本一癒されるサイト」をオープンしたことでも注目を集めた。スカイサファリといった独特な設備も、姫路セントラルパークの魅力だ。

十勝川温泉:大量の宿泊キャンセルによる暇っぷりをあえてアピール

 北海道河東郡音更町に位置する十勝川温泉。ここも2018年に、自虐的な文言を添えたポスターを制作して注目された。ポスターには「元気ないです十勝川温泉」というキャッチコピーが掲げられ、写真には新メニューの試食や入浴を楽しんでいるスタッフの様子が写し出されている。
十勝川温泉観光協会

北海道遺産に指定されるほど貴重な温泉“モール温泉”が最大の特徴(画像は十勝川温泉観光協会公式ホームページより)

 このような独創的なポスターが誕生した背景には、2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震による、1万人以上もの宿泊予定客の予約キャンセルがあったという。そんなピンチを打破するために、窮状を訴えながらも明るいイメージのポスターでPRを行うことにしたのだそうだ。  当時は批判の声もあったそうだが、結果的には危機を乗り越え、「温泉総選挙2018」で審査員特別賞を受賞するという成果を上げることとなった。  新型コロナウイルス感染症が流行している現在の情勢下では、感染症対策の内容を公示するという試みも行っている十勝川温泉。宿泊客が激減した現状を伝えたポスターも含め、その真っ直ぐさが愛されている理由のひとつなのかもしれない。

愛知県豊根村:チョウザメPR のフックに使われたのは村の人口の少なさ

 最後に紹介するのは、2018年から貼られた愛知県北設楽郡の豊根村のポスター。そのポスターの内容は、「チョウザメが、村の人口を超えましたので、食べに来てください」というキャッチコピーと、チョウザメを抱きかかえた笑顔の男性の写真が大きく載せられているというものだ。
豊根村

チョウザメ料理のほかにも四季折々の見どころがある豊根村(画像は愛知県豊根村公式ホームページより)

 インパクト抜群なポスターが制作された目的は、チョウザメを特産品としてアピールすることにあった。2012年から養殖を始めたチョウザメが、豊根村の人口の数倍ほどにまで増えたことが、このキャッチコピーの由来となっている。  豊根村のほかにも、愛知県の東三河地区にある市町村から合計で9種類のポスターが制作されたが、そのなかでも豊根村のポスターがダントツで話題を集めたのだとか。  養殖されたチョウザメは、道の駅やレストランなど豊根村に位置する4つの店舗で舌鼓を打つことができるという。チョウザメの卵であるキャビアも、今年2020年の生産を目指しているとのことなので、今後豊根村はさらに有名になっていくかもしれない。  ――窮地や逆境をネタにして世の中の目を引こうとする発想は、先の見えない今の時代を生き抜くために不可欠な考え方であると、今回紹介した自虐ポスターの数々を見ていると実感できる。今後もピンチをチャンスに変えた、驚くようなアイデアが込められたポスターが次々に誕生していくだろう。<文/A4studio>
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