しかし、問題は一夫多妻制の件にとどまらなかった。領収書を改ざんし裏金を作ったり、無断でほかの会社にも籍を置いているなどの行為が発覚したのだ。 「さすがにこれはまずいとおもって、A氏と直接話をしました」 　最悪解雇ということも考えていた会田さんであったが、A氏の子供をダシにしたお涙頂戴エピソードが始まったんだとか。 「“家族を養うためだったんです”とか、“子供の海外短期留学費用のために”とか。そんなことを言われると強く言えないですよね」 　会田さん自身も子供がおり、感情移入してしまったという。経営者としてはいささか優しすぎる気もするが……。 「僕も後悔しています。今になって思えば、A氏の戦略に乗せられてしまった自分が悔しいです」 　最終的に、経費利用の見直しを約束することで話し合いは終わりにとなり、現在も会田さんの会社に籍を置いているA氏。 「正直、今、A氏に組織から抜けられたら致命的なダメージです。私生活はだらしないですが、仕事では常にアンテナを張って新鮮な情報を提供してくれる。だから、一時のミスで手放すのはもったいないというのが本音です」 　一時のミスかどうかはさておき、本妻に女性関係がバレていないA氏は仕事面でも相当なやり手であることがわかる。優しさが仇となりこのまま、会田さんの会社が乗っ取られるなんてこともあるのでは？　と、少し心配になった筆者であった。