元サッカー日本代表・内田篤人を世界レベルに押し上げた“察知力”
サッカー元日本代表でJ1・鹿島アントラーズに所属する内田篤人が現役を引退した。23日(日)に行われた対ガンバ大阪戦で途中出場し約80分間に渡りプレー。試合後にセレモニーを、翌日リモートでの会見を行い、14年半の現役生活に別れを告げた。
内田は清水東高校を卒業後、’06年に鹿島入り。高卒1年目でレギュラーを獲得すると、’08年1月には弱冠19歳でA代表に選出。’10年南アフリカW杯後にはドイツ・ブンデスリーガの強豪シャルケ04に加入し、いまだ日本人最高位であるUEFA CLベスト4進出という偉業を成し遂げた。攻守に重要な役割を担い、押しも押されもせぬ主力選手としての地位を確立。右SH(サイドハーフ)ジェフェルソン・ファルファン(元ペルー代表)とのコンビは流れるような連携から「チョコレートライン」の愛称で親しまれ、シャルケの一時代を築いた。
身長176cmの内田はブンデスの選手としては小柄であり、67kgという体重はリーグ最軽量クラスだった。それにも関わらずディフェンスラインの一角を担い、現地で“リーグ屈指のSB(サイドバック)”と称されるまでに活躍できたのは、体格差をカバーして余りある明晰な頭脳があったからだ。
内田のプレーはとにかくクレバーだった。高い戦術理解力に加え、敵・味方の少しの所作から次のプレーを読む洞察力は群を抜いており、気の利いたプレーで味方をサポートした。
ビルドアップ時はボールを持った味方の様子、相手の守備のやり方をよく観察し、サポートの位置を微調整。ワンタッチ目で縦に運んでスピードアップするのか、それとも一度止めて組み立て直すのかといった判断が抜群で、サイドバックながら攻撃のリズムを作る役割を担った。ピッチ上の“空気を読む”ことに関して天才的で、日本代表でも本田圭佑や岡崎慎司ら多くの選手が「やりやすい」「篤人が入るとボールが回る」とその能力を絶賛した。
この内田の“察知力”は、ディフェンスの局面でも存分に発揮された。危ない場面を作られる前にいち早く相手の狙いを察知し、ポジションを微調整。駆け引きで常に先手を取った。
時には近くの味方が死角を突かれそうになっていることすらも察知し、必要とあらば迷わず自らのマークを捨て、より危険なエリアをカバー。仮に奪いきれなくとも、シュートのタイミングを一拍遅らせるなどして献身的にチームを支えた。
当時の日本代表も、内田のこの見えないファインプレーに救われた場面は数知れない。得点やアシストのように数字として残るプレーではないが、内田の気の利いたプレー、的確なポジショニングは幾度となく味方を助けてきた。
現在日本代表で右SBのレギュラーを務める酒井宏樹(マルセイユ)も、内田に次ぐ二番手だった当時「篤人くん、ああいうの本当に凄いんだよね。上手いだけじゃなくて、めちゃくちゃ頭が良い」と称賛していた。今ではフランス1部の強豪でスタメンを張るまでに成長した酒井も、内田から多くの影響を受けたことだろう。
内田を世界レベルに押し上げた“察知力”
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フリーライターとして雑誌、Webメディアに寄稿。サッカー、フットサル、芸能を中心に執筆する傍ら、MC業もこなす。2020年からABEMA Fリーグ中継(フットサル)の実況も務め、毎シーズン50試合以上を担当。2022年からはJ3·SC相模原のスタジアムMCも務めている。自身もフットサルの現役競技者で、東京都フットサルリーグ1部DREAM futsal parkでゴレイロとしてプレー(@yu_fukuda1129)
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