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五輪バブルから急転直下の経営者「売上げは7、8割減…どこまで続くのか」

 いったい、いつ終わるのか、新型コロナ感染症。延期されたオリンピックが来年、開催される保証もどこにもない。新型コロナ感染症による需要消滅で、今、そこにあるもう一つの危機「コロナで経済死」は、人々の生活や心をどれぐらい、むしばんでいるのか? コロナ困窮の最前線をレポートするとともに、新刊『コロナ大不況で「経済死」しないための本』を上梓したばかりの企業再生ドクター・大和竜一氏に困難からの脱出法を訊いた。
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イラスト/青木雄二プロダクション

五輪需要の崩壊で瀕死になった意外な業種

「東京オリンピックが開催されたら、スゴいことになる」  これは、日本中のどの業界も考えていたことだ。外国人観光客も今年はさらに飛躍的に増えるだろうし、国内の旅行客も増えて観光業界が盛り上がる。「オリンピック景気」を当て込んで、浅草をはじめ、日本伝統の匂いのする地域は、新たなビジネスホテルやマンション建設などが急ピッチに進んだといわれる。  当然、その活況に後押しされて、飲食業界も潤うはずだった。高級レストランはもとより、寿司屋などの日本風を売り物にした店、世界各国の料理が楽しめる店、庶民的な居酒屋に至るまで、拡大路線に舵を取り、客の増加に対応できるよう、我先に、と先行投資に走っていた。そんな対象の一つに「業務用冷蔵庫」もあった……。

春先までは人手が足りない忙しさ

 レストランやラーメン店などに常備されていて、厨房にドンと置かれている、およそ人間の背の高さと同じくらいの、銀色のあれだ。Mさん(50代)は、その業務用冷蔵庫の外側の部分を作る工場を東京の下町で経営している。
男性

写真はイメージです

「通常、まず大手メーカーが店から注文を受けて、それを下請けのメーカーに流すんです。そこでは機械部分だけ作って、さらに外枠、つまり銀のハコ部分はそれ専門のメーカーに流す。ウチはそのハコ作りをやっています」  全体はステンレスで作り、中にウレタンを入れたり棚を作ったり……。最終的に店に納品するのは、機械部品を作るメーカーがやるのだが、「みんな、困ってましたよ。なにしろ注文が多くて。店で、冷蔵庫を取りつける職人が足りないんです。溶接の技術もいるし、シロートではできない。特に今年の初めなんか、なかなか仕事をこなしきれなかった」と言うMさん。  オリンピック需要を見越して、単なる冷蔵庫ではなく、ホテルなどを中心に業務用ワインセラーの注文も絶えなかった、とか。「高級感を出すためにハコもガラス製にしたり、凝った作りにして価格を高く設定したりもしました。そりゃもう、今年は近年にないような好景気、いや久々のバブルが見込めると、みんな張り切っていましたよ……」と、冷めた目で笑っていた。
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7月にパッタリ止まった注文
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