コロナで「まさか」の転落。再就職先が見つからず、自暴自棄に
いま再び猛威をふるう新型コロナウイルス。日本全国の新規感染者が2000人を超える日が続く。菅義偉首相は21日、「GoTo」事業にかんしても内容を見直しすると発表した。
これは“第3波”がきているのかもしれない……。今年1月、日本国内で初めて新型コロナウイルス感染者が確認された時、果たしてどれほどの人が今の状況を予測していただろうか?
想像以上にコロナ禍が長引いたことで、自身でも「まさか」という状況に追い込まれた人々がいる。
「育った家庭が貧乏だったので。食べ物を扱う仕事につけば絶対に食い物には困らない、そう思ってこの店に就職したんです」
こう話すのは、関西の仕出し割烹店に20年以上勤務していた原田泰夫さん(仮名・40代)。和食専門の料理人として腕をふるっていたが、コロナの影響によりこの夏、店が倒産した。
絶対に食いっぱぐれはない、と思っていた自分が「無職」になったことが信じられなかった。
「いつの間にか、仕事は絶対にあるもの、弁当や料理が必要とされないことなんてありえないと思っていたからすごくショックで。2週間ほど寝込んでしまった」(原田さん、以下同)
店では料理人のチーフを務め、腕には自信があった。これまでにも、同業他店から「うちに来ないか」と誘われたことも1度や2度ではない。気を取り直し、再就職を目指して活動を始めたが……。
「旧知の店も結局コロナで火の車、私みたいに経験があって、それなりの給与を支払わなければならない人間を雇う余裕はどこにもなかったんです」
実際、原田さんの若い部下たちは、レストランチェーンや食品工場などで働き、生計を立てているというが、原田さんがそうした職場に履歴書を持って訪ねていっても、反応は冷ややかだったという。
「まるでいらない人間だ、と言われているようでツラいです。コロナで、社会から無駄が削ぎ落とされていくようで、私の仕事も、存在も、余分なものだったのかもしれないと考えるようになりました。
少しでも早くお金を稼がなければならず、ホームヘルパー(訪問介護員)の研修を受けて、すでに現場に出ています。この仕事も、向こう何十年は食いっぱぐれないでしょうし」
コロナがきっかけで、自分自身が「いらない人間」なのではないかと感じていたのは原田さんだけではない。
再就職先が見つからない料理人
飲食店はどの店も雇う余裕がない
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