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ニトリ、島忠買収の衝撃。もはや「家具の会社」ではない

ニトリネット

ECサイト「ニトリネット」も好調

コロナ前から絶好調だったニトリ

 そんな島忠を仲間に入れたニトリですが、コロナ禍の勝ち組企業として知られています。2021年2月期も、37期連続で増収増益を更新する見通しです。  コロナ流行前の2020年2月期時点で、売上は6423億円、営業利益は1000億円を超えています。  さらにコロナ禍でも、ニトリの2020年3~8月期の売上高は前年同期比12.7%増の3624億円、営業利益は同45.0%増の805億円、経常利益は同43.4%増の810億円、純利益は同35.1%増の497億円と増収増益です。  簡単に言えば、絶好調なのです。  背景にあるのは、在宅勤務・巣ごもり消費が拡大したため、住居家具やオフィス家具の需要が伸びたことです。  4~6月には最大110店が臨時休業したにもかかわらず、売上・利益ともに伸ばしていることは、誰の目から見ても驚異的な数字と言えます。  しかし、ニトリの絶好調ぶりは“コロナバブル”以前から起きていたことでした。ニトリは企画から製造、販売を手掛ける製造小売業(SPA)を取り入れています。  つまり、販売する家具や雑貨のほとんどが自社ブランド。そのため、店頭の販売動向に応じて、生産量を増減少させたり、柔軟に在庫を調整できるのです。以前、私馬渕磨理子が「ニトリは家具業界のユニクロ」と表現したのもそのためです。  さらに、今回のコロナ禍によって「家の中」にコストを払う人が増え、業績の追い風となりました。特によく売れたものが、収納付きベッドフレーム家具や、新生活向けの家電。  そのほか、フラットデザインの多用途収納ボックス「Nインボックス」や、ネジや工具を使わずに組み立てられる収納ケース「Nクリック」などがよく売れ、さらに、パソコンデスクやワークチェアなど、テレワークに必要な商品のニーズも拡大しました。

ニトリは「日本で一番売れてる食器屋さん」

 しかし、ここで疑問が生まれませんか? ベッドやリモートワーク用の机は一度購入すれば、しばらく数十年は買いません。業績を支える要因にならないのでは? そう思った方、鋭いです。  実は、ニトリの店舗売上の過半数は、キッチン用品やカーテンなどの低価格雑貨なのです。購入機会が多いため消費者データが集まりやすく、在庫の回転率を高めやすいのです。  実は、ニトリは「家具業界のユニクロ」であり、「日本で一番売れてる食器屋さん」というのが正しい表現なのです。  話をまとめます。ニトリがコロナ以前から強い理由は… 1:ユニクロと同じ生産性(製造から販売まで引き受けるので在庫ロスが少ない) 2:日本一の食器屋さん(家具屋さんのふりをして、日用雑貨を売る) 3:正確に需要予測ができる(日用雑貨は需要予測がしやすいため)  この3つと言えるでしょう。

コロナで増えた「近所で買う」と「一軒目で全部買う」

 さらに、コロナ禍での需要の伸びに貢献したのは、テレワーク需要や巣篭もり消費に加えて、ニトリが郊外の店舗が多かったからです。都心部の店舗に人が出かけなくなったものの、郊外店では昨年同月比平均売上120%以上と好調な数字となっていました。  加えて、色んなお店を回り、購入する家具を決めるという「ディスティネーションストア」を避ける消費者が増えたことも挙げられるでしょう。  最初にニトリに行って、他のお店に行かず、ニトリでほしいものを全部買ってしまうということです。さらに、2020年度ニトリは64店舗の新規出店を予定しています。コロナ不況で空き店舗となったショッピングモールのスペースにニトリの売り場が増えていくのは間違いないでしょう。  また、ECサイトも堅調で、売り上げの10%程度を稼ぐまでに成長しています。今後は店舗拡大に加えてECでも売り上げを積み上げていくでしょう。
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「ニトリは何の会社?」答えは…
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