5. 酔った勢いで、性行為に及ぶのはしかたがない
仕方なくない。酔っていれば許されるのなら、酔って人を殴っても仕方ないし、酔って車を運転しても仕方ないことになるではないか。いつから酒飲みは治外法権になったのか教えて欲しい。
6. 互いに成人していれば、性行為の際に同意を求める必要はない
「お互い大人だし……」という言い訳は、いつも悪いことをした側を慰めることにしかならない。
売買関係を想像すれば、いかにこの理論がおかしいかわかるだろう。成人していれば意思確認なく物を勝手に売りつけて、お金を奪っていいわけではない。
もちろん勧めることはできる。「りんごをお1ついかがですか?」と訊ねて、相手が欲しがれば売買が成立するが、「さっきの方のカバンに勝手にりんごを入れました。りんごをあげたので、勝手にサイフからりんご代もいただきました。でも、あの方成人してるから合意ですよね」とはならない。
セックスも同じだ。「大人だから確認なんていらないでしょ」というのは、ただの押し売りする側の理論だ。
7. 家に泊まるのは、性行為をしてもいいというサインだ
「家に行ったんだから、女性も同意だったんだろう」
これは女性側からもたまに出る意見だ。ABEMAの番組では女性の三谷アナウンサーから「そもそもリスクがあることをちゃんと分かった上で女性は動かなきゃいけないと思うんですよ。全部が男性が悪いってなってること自体がおかしいと思う」「女性が気をつければいいだけの話」
個人的にこういう意見は否定したい。女性が女性に生まれただけで「性被害に遭う前提で女性側が気をつけろ」という意見は、同時に性被害に遭った相手に対して「襲われるような状況を許した女性も悪い」という論調を強化するものだ。
まず大前提として襲った加害者が1番悪い。そして、女性には男性と同じく自由にお酒を飲みに行ったり、誰かと対等に意見を交わし合ったり、真夜中にコンビニに1人で買い物に行ったりする権利がある。
それを「女に生まれたんだから、○○はするな」という意見をいうことは、「足が不自由に生まれた人は、そう生まれたんだから仕方ないこと。本人たちが努力すればいい話で、街中にスロープをつけたりする必要もない」という意見と同じで、社会をより良くしていく発想がない人の意見だ。
足がない人でも車イスに乗って一般人と同じ生活を送れるように社会が協力し合えばいいように、女性が安心・安全に生活できることを男性を含めた社会全体が考えればいい。そのために性的同意というものがあるのだから。
8. 付き合っていれば、性行為をするのは当たり前だ 9. 同じ相手に、毎回、性行為の同意を取る必要はない
この2つは同じ話になるので、まとめて解説しようと思う。「恋人(夫婦)なんだから、セックスするのは当然でしょ?」「なんで今日はダメなの?」というのは、本当に自分本位な意見だなと思う。
たとえば「相手のことは愛しているけど、セックスはしたくない」そんなカップルや夫婦もいるだろう。セックスレスの家庭などだ。で、そんな相手に「そういう関係なんだから当然だ!」と迫るのは、法律上はどうであれ僕は『家庭内レイプ』だと思う。
第一、セックスしたくなくなるパターンは男女両方だってあり得るので、男性だって「夫でしょ?! セックスするのは当然よ! 毎日最低3回はシなさい!」といわれたら、困る人もいるだろう。この項目がおかしいのは考えればわかることだ。
もちろん「正当な理由なく相手との性行為を断ること」は離婚事由になることもあるので、それが理由で離婚になるならそれは仕方のないことだ。『合わなかった』という話でしかない。
10. ナイトクラブに来る人は出会いや性的交遊を求めてくる人が多いので、同意を取る必要はない
いわゆる『そういうとこにいるんだから、そういうつもりだったんだろう』という意見。ナイトクラブ以外にも、「合コンにいるんだから」「露出の高い服を着てるんだから」とか色々なパターンがあるだろう。
全てのチェックポイントについていえるが、免許を持ってる人は車の運転と同じに考えるといい。「だろう運転は辞めて・かもしれない運転をしよう」というアレ。いってしまえば性的同意も「だろうセックスは辞めて・かもしれないセックスをしよう」ということ。
「家に来たってことはきっと相手はセックスしたいんだろう」「イヤといってないから、きっとイヤじゃないんだろう」ではなく、あらゆることを「家に来たってセックスしたいとは思ってないかもしれない」「イヤとはいってないけど、ホントはイヤかもしれない」と考えること。
自分がそうだからそうではなく、あらゆる人間がいることを知っておくこと。チェックリストという形式にテンプレートを感じるのではなく、色々なパターンがあることを想定しろというのが、本来この「性的同意のチェックリスト」が伝えたかったことではないだろうか。
「据え膳食わぬは男の恥」というが、そもそもそれ、本当に据え膳だろうか? 据えられてない膳を勝手に食べるのは泥棒のすることだ。男の恥の前に「社会の恥」にならないために、まず性的同意を得る当たり前の感覚を世の男性全員に身に付けてもらいたい。
1989年6月7日生まれ。男性でありながらAV女優として、大手AVメーカーKMPにて初の専属女優契約を結ぶ2015年にAV女優を引退し、現在は作家活動を行っている。ツイッター
@OshimaKaoru