「コロナワクチンは高齢者を優先」は正しいのか?池田清彦氏の見方
新型コロナ(COVID‐19)ワクチンの接種が、英米などでは2020年12月から始まっている。
日本政府は、欧米の製薬メーカー(※)からワクチン供給を受けて、医療従事者は2021年2月下旬に摂取スタート、65歳以上の高齢者は早くて4月1日から、その後に対象を拡大する方針だ。
※米ファイザー(独ビオンテックとの共同開発)、米モデルナ、英アストラゼネカ
騙されない老後 権力に迎合しない不良老人のすすめ』より再編集、< >内は編集部注)
アメリカの製薬大手である「ファイザー」が、ドイツの「ビオンテック」と共同で開発中のCOVID‐19ワクチンについて、「90%を超える予防効果がある」とする臨床試験結果を発表した。また、そのわずか1週間後には、こちらもアメリカの製薬会社である「モデルナ」から、自社で開発中のワクチンに「94.5%の確率で予防効果がある」という臨床試験結果が発表された。
ちなみに、「90%の予防効果」というのはワクチンを接種した人の90%がウイルスに感染しないという意味ではない。あくまでも「ワクチンを接種した人が接種しない人と比べてどれだけ発症を防げたか」を意味している。
例えば4万人のボランティアを募り、2万人にはワクチンを投与し、2万人にはプラシーボ(偽薬)を投与したとして、一定期間内の発症者が前者は5人、後者は50人だったとすれば予防効果は90%ということになる。ワクチンを接種したことで50人が5人になった(つまり45人は発症を免れた)という意味での「予防効果90%」なのである。
ただ、実用化にはいくつかの懸念がある。
その理由のひとつは、ファイザーやモデルナが開発したmRNA(遺伝子情報)ワクチンというものが非常に不安定で壊れやすいことだ。
モデルナのワクチンの保管温度はマイナス20度だそうなので、マイナス70度以下で保管しなければならないファイザーのワクチンに比べれば保管は楽かもしれないが、いずれにしても輸送や保管にかなり注意を要するのは間違いない。
そしてそれ以上に懸念されるのは、安全性である。
ワクチンに限らず、医薬品というのは本来であれば安全性を確認するために最低でも1~2年、長い場合は7年の年月をかけて多くの治験(臨床試験)が繰り返されるのが普通である。
しかし、COVID‐19のワクチンに限っては、必要な治験をすっとばし、一刻も早い実用化を図ろうとしているのは明らかだ。製薬会社にしても一番乗りになれば相当儲かるだろうから、どこも必死なのである。
一気に期待が高まっているmRNAワクチンも、その有効性は確かだとしても治験に必要十分な時間をかけない限り、安全性には不安が残る。もちろん何ごともリスクゼロというのはありえないのだが、それでも確保されるべき最低限の安全性というものはある。見切り発車的に認可された結果、副作用が報告されるといった危険性も決して低くはないと思う。
<米疾病対策センター(CDC)は、コロナワクチンで深刻な副反応=アナフィラキシーが起きる頻度を調べた。摂取100万回あたりで、ファイザー製は5回、モデルナ製は2.8回だった。(米国での昨年12月14日~今年1月18日の摂取で調査)>
だが昨年、「ワクチン接種で高齢者を優先させるのは、本当にいいことなのか?」と疑問を投げかけていたのは、生物学者の池田清彦氏(73歳)である。池田清彦氏は、早稲田大学と山梨大学の名誉教授を努める一方、テレビや著書で社会問題や生き方についても発言している。
重症化リスクが高い高齢者を優先するのは当然に思えるが、なぜ自身が“高齢者”である池田氏はこの方針に疑問を持ったのだろうか。
ちなみに、今年2月になってアストラゼネカ製のワクチンについて「65歳以上には摂取を勧めない」という勧告が、ドイツ、フランス、スウェーデンなどで相次いで出されている。65歳以上の治験(臨床試験)データが不十分だとして、フランスのマクロン大統領は「65歳以上の人にはほとんど効果がないとみている」と発言した。
メーカーは反論しているが、このワクチンについては「高齢者優先」は正しくなかったようである。
(以下、池田氏の近著『
「90%の予防効果」の、本当の意味
見切り発車の認可
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