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「コロナワクチンは高齢者を優先」は正しいのか?池田清彦氏の見方

感染抑止のためなら、早く若者に打つほうが合理的では

 ワクチン接種が始まっても数か月は様子を見るほうが安全だろう。そのうえで重篤な副作用が問題になる気配がなければ、ある程度は安心できるから、その時点で接種するかどうか検討すればいいと思う。  とはいえ、自分さえよければいいというのも憚られるし、その間にうっかり感染して誰かにうつしてしまえば他人の自由を損ねることにもなりかねないので、しばらくワクチンの様子を見るという選択をするのであれば、その間は家でおとなしくしているくらいのことは心がけるべきかもしれないな。
ロックダウン、ワクチン、マスクに反対する人たちも

ロックダウン、ワクチン、マスクに丸ごと反対する人たちも(カナダ、バンクーバー 2020年11月1日((c) Elena Vlasova)

 しかし、冷静に考えてみるとCOVID‐19に関していえば、実際に感染を広げているのは無症状や軽症の若者なのだから、ワクチンはまず若者に打つほうが感染拡大を抑止する効果があるのではないだろうか。  僕のような老人は、若者に比べたら外出の機会などたかがしれているわけだから、感染する確率も低いし、ましてや感染源になる可能性はさらに低い。そういう意味で、まず若い人から先に打つというのは理にかなっている。 <厚生労働省HPによると、ワクチンの予防効果は「発症予防」であって、感染予防効果の「実証は不可能」。だが「感染予防できない」と断言もできない。例えばオックスフォード大学は2月2日、同大学とアストラゼネカが開発したワクチン1回の摂取で「PCR検査で陽性反応となる確率が67%減少する」=感染を抑止できるとの研究を発表した>

ワクチンを打つのは、自分のためより社会のため

 特段の問題がないことがわかったら老人も安心してワクチンを打つことができるだろうが、そもそも日本人の大半がワクチンを接種していれば、その時点で感染はかなり落ち着くだろうから、老人は無理してワクチンを打つ必要さえなくなるかもしれない。 「ワクチン接種は若者を優先に進めます」なんていうことになれば、多くの老人たちは「自分たちを見捨てるつもりか!」などと怒りだすに違いない。しかし、実はそっちのほうが「お年寄りの命を最優先に守る」ための配慮としては正しいのではないかと僕は思う。  多くの人は、ワクチンは自分のために打つと思い込んでいるが、本当は集団免疫を獲得するため、すなわち社会のために打つものだということを忘れてはいけない。 <文/池田清彦> 【池田清彦プロフィール】 1947年生まれ。生物学者、現在は早稲田大学名誉教授、山梨大学名誉教授。生物学分野のほか、科学哲学、環境問題、生き方論など、幅広い著書がある。フジテレビ系『ホンマでっか!?TV』ほか各種メディアで活躍中。近著は『騙されない老後』。Twitter:@IkedaKiyohiko
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