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「コロナワクチンは高齢者を優先」は正しいのか?池田清彦氏の見方

先に打つ高齢者は、「治験」に参加するようなもの?

 COVID‐19に対するワクチン接種は、「重症化リスクが高い集団や、感染リスクが高い集団から優先的に接種しましょう」という「配慮」がなされるだろう。前者は高齢者で、後者は医療従事者である。
コロナワクチン

ファイザーとビオンテックが共同開発したワクチン(c) Rodrigo Fernández

 しかし、本来あってしかるべき段階を踏んでいない、つまり十分な治験を積んでいないのだから、思いもよらぬ副作用が起こるかもしれない。「年寄りや医療従事者を手厚く守ってくれている」などとありがたがって、ワクチンをわれ先にと打てば、その副作用で重篤な症状に襲われるかもしれないわけだ。  そのようなワクチンを「先を譲ってもらって」早い時期に接種するのは、本当にそのワクチンが安全かどうかを確認するための最終的な「治験」に参加するのとなんら変わらないと思う。  特に何も問題が起こらなければいいが、医療従事者に副作用が出ると医療崩壊が起こるおそれがある。一方で副作用が原因で老人が大勢死んだとしても、国の経済に与える影響は少ないうえ、そのぶん年金も払わずに済むのだから、若い人が犠牲になるより国としてのリスクは少ない。

若者で実験するより、国としてリスクは少ない

 国の将来にとっては年寄りを優先という判断も、だからあながち間違いではない。しかし、「お年寄りの命を最優先に守ります」などと恩着せがましく言われたくはない。本来であれば、「このワクチンは安全性が微妙なのですが、よろしくお願いします」くらい言ってもいいものだが、それではワクチンを打つのを見送る人ばかりになってしまうだろう。  ワクチンというのは大勢の人が打ってこそ、感染拡大を抑止する効果がある。ワクチン接種が広がらないと困るのは、個人ではなく社会なのだ。  だから国としては、本当は強制的にでも打たせたいところなのだろうが、さすがにそういうわけにはいかないので、「さあ、お年寄りのみなさん、ワクチンを打って自分の身を守りましょう」などと大宣伝するかもしれない。でも本音としては「社会を守るために、ちょっと危険かもしれないけれど、お年寄りの方からワクチンを打っていただきたい」ということなのである。
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感染抑止のためなら、早く若者に打つほうが合理的では
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