年収1000万円でも家計は火の車?「車は国産、月2回の外食が精一杯」
年収1000万円といえば、庶民にとっては「お金持ち」のイメージだろう。国税庁の民間給与実態調査(令和元年分)によれば、1年を通じて勤務した給与所得者数は5255万人、その平均給与は436万円だった。1000万円以上の人は全体のうち4.8%、900万円台(900万円超~1000万円以下)の人は1.9%である。そもそも正規雇用者が減少している現実もあるので、彼らは世の中の10人に一人もいない、「勝ち組」と言って遜色ない。
さぞ余裕のある暮らしを謳歌しているはずだと思ってしまうが、なかには「家計は火の車です」と嘆く人たちもいる。いったい、なぜ……?
「妻は専業主婦で子どもは小学生が2人。一昨年、都内郊外一戸建てを買いましたが……。とてもじゃないですが、余裕のある暮らしは無理です」
こう話すのは、都内在住の大手ゼネコン勤務・坂本敏朗さん(仮名・40代)。世帯年収は坂本さんの収入一本、およそ950万円ほど。だが、生活は決して楽ではないという。
「給料は額面で月額55万円ちょっと、手取りだと45万円弱ですね。住宅のローンが月14万円、光熱費や食費、通信費で11万円ほど。さらに、車のローンやガソリン代、衣服代に加えて、子どもの習い事、塾代が2人分で6万円程度かかってくるが、これが想定外でした」(坂本さん、以下同)
坂本さんもかつては「年収900万もあれば上等」だと考えていた。家も車も持ち、年に一度は家族で旅行、中流以上の生活ができるはず。しかし結婚してから時間が経つにつれ、その現実を思い知った。
「車だって本当なら外車が欲しいのですが、家計のことを考えて国産ハイブリット車のワゴン。計算上は毎月10万円以上浮くはずなのですが、月に2度外食するのが精一杯。児童手当は所得制限に引っ掛かり、あてにできない。とにかく細かな出費が多すぎる。それなりの年齢、立場なので、部下を連れて飲みにいくこともあります。今後、子どもが大きくなり、受験などでさらに出費が増えるとなると、妻にも働きに出てもらわないと」
磐石だと思っていた年収900万円の生活は、思ったほど「裕福ではなかった」と話す。端から見れば、羨ましい気もするのだが……“出費の多さ”が坂本さんを不安にさせているようだ。
神奈川県在住の出版社勤務・井出勇気さん(仮名・30代)は、夫妻合わせて年収1200万円ほど。こちらは「世帯年収」ではあるが、1000万円の壁を超えるとどうなるのか。
結婚後間も無く、湾岸エリアのタワーマンションを購入し、妻は4年前に妊娠したが、完全に「失敗した」と後悔している。
「年収は増えるもの、と思っていたのが失敗の原因ですね。妻が産休になり、年収が落ち込むと、マンションのローンを払うのもキツくなってきました。子どもができれば車も必要だろうと維持費を調べると、駐車場代やガソリン代、車のローン代込みで月に8万近くかかり、諦めました」(井出さん、以下同)
井出さん自身の収入は、出版不況のせいで増えない。年々減少しコロナ禍以降はボーナスもカット。妻は産休明けに職場復帰したものの、収入は以前より減った。
子どもを幼稚園に預けているが、年収が多すぎて公立には通わせられず、都内の勤務先近くにある、富裕層向けの私立幼稚園に仕方なく通わせている。
「家庭を持つ前に、生活レベルを上げてしまっていました。年収は年齢とともに増えるだろうと思っていましたので。ここにきて計算が狂ったというか、甘かった。マンションを売り払い、郊外にでも引っ越せばいいのでしょうが、今さら生活スタイルを変えることにも抵抗がある」
独身の時はよかったが、結婚してみたら全然足りない……なんてことはありがちだ。
出費の多さで精神的に不安
生活レベルを上げた結果…
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新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。
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