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無神経、不謹慎…リポーター大村正樹が誹りを受けるのはなぜなのか?

「弱い者イジメ」をするリポーター

大村正樹4-1 2011年、ニュージーランドのクライストチャーチで大地震が起こった。合計185名もの死者を出した痛ましい出来事だった。当時19歳だった日本人留学生男性が瓦礫に挟まれ、救助のために右足切断を余儀なくされた。このとき、大村は彼に電話インタビューを行っている。そのやり取りが大炎上することとなった。  このとき、大村が口にしたのが、「脚を切断するというのは、あなた自身は覚悟されていたんですか?」であり、「今、自分の体が目の前にある訳ですけれど、これまでね、スポーツもいろいろ出来ていた訳ですよね?」という質問だった。この問いに対して、「無神経だ」と憤り、涙を誘うための「誘導尋問だ」と、視聴者は憤慨した。 「事故に遭った青年は、僕の地元の富山出身でした。彼の通っていた学校もよく知っていました。そういうこともあって、直接彼に電話を繋ぐことができました。自分としては“僕が話を聞いてあげるよ”と入り込み過ぎてしまった、寄り添いすぎたという部分はあったと思います。もっと優しい聞き方もできたとも思いました」  さらに、その5年後のことだった。女優・高畑淳子の息子が強姦事件を起こした際に、大村は「息子さんの性癖に気づいていたのか?」と質問した。すると、「何のために、息子の性癖を母親に聞くのか?」「お前の母親はお前の性癖を知っているのか?」と、世間からの大バッシングを受けることとなった。 「会見の前の日の夜から、“どうやって質問しようか?”ということはずっと考えていました。いろいろ考えた結果、僕は《性癖》という言葉を選びました。これは後出しじゃんけんのようになるけれど、必ずしもセクシャルなこと、《性的嗜好》だけを意味するのではなく、《性質》という意味合いも込めての選択でした。でも、やはり強引な聞き方でした。僕の言葉選びが間違っていたのだと気づかされました……」

大きすぎる炎上の代償

 この日、大村が帰宅してみると、娘が泣きはらした目をしていた。何があったのか、具体的に聞かなくとも、おおよそのことは想像できた。それからしばらくの間、自宅にはさまざまな嫌がらせが相次いだ。インターネット上に自宅情報がさらされたからだ。その結果、大村一家は引っ越しを余儀なくされることとなった。炎上の代償はとてつもなく大きかった。 「この場面は各局、全国に生中継されました。言葉選びを間違ったことで、僕は《性癖リポーター》と言われることになりました。あのとき、高畑淳子さんは憔悴し切っていました。その姿を映すだけでよかったのかもしれません。そこに僕が質問を重ねたことで、視聴者には弱い者いじめをしているように映ったのだと思います」  こうした一連の出来事によって、大村は「無神経」「不謹慎」と言われ続けることになった。一度ならずも二度、三度と炎上騒動を起こしてしまったリポーターは、その後どうやって汚名返上すればいいのか? いや、そもそも心が折れつつあったリポーターは、どのように心の恢復を図ればいいのか? 大村正樹にとっての新たな試練が、目の前に暗く、重たく広がっていた――。 (第5回に続く) 取材・文/長谷川晶一(ノンフィクションライター)撮影/渡辺秀之
1970年、東京都生まれ。出版社勤務を経てノンフィクションライターに。著書に『詰むや、詰まざるや〜森・西武vs野村・ヤクルトの2年間』(インプレス)、『中野ブロードウェイ物語』(亜紀書房)など多数
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