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しんじょう君を生んだ男の「特産品をもちすぎない」ゆるキャラ戦略

 年間200万円しかなかった高知県須崎市のふるさと納税の寄附額をわずが4年で14億円まで増やした公務員がいる。地域創生請負人とも呼べる男こそ、守時健氏だ。独自のマーケティング戦略で数々の成功を収め、初書籍『日本一バズる公務員』を上梓した彼が、地方創生と向き合ったとき、まず真っ先に仕かけたのが「ゆるキャラ」だった。そのゆるキャラを使った戦略について、今回語ってもらった。

ゆるキャラ成功には絶対条件が存在する

地方創生マーケティング術

みんな市町村の法被とかを着て地元をPRするなか、ロン毛に私服という公務員らしからぬ格好でしんじょう君をアテンド。写真はゆるキャラグランプリ1位の凱旋時

 3度目くらいのゆるキャラブームがなんとなく下火になりつつあった’13年に私が誕生させたのが、高知県須崎市のゆるキャラ・しんじょう君でした。 「たかがゆるキャラ」と揶揄されがちですが、老若男女の懐にスッと収まりやすく、ファンの方々が根強く応援してくださり、少ない予算でヒットを狙える……。ゆるキャラが地方創生の要であるのは、ゆるぎない事実です。  誕生以来8年間、奇跡的に億単位の経済効果をもたらし続けているしんじょう君ですが、企画立案時はゆるキャラに関する知識がゼロという手探り状態からのスタートでした。それでも、研究とトライ&エラーを重ねながら、ファンの皆様の応援のおかげで’16年には『ゆるキャラグランプリ』で1位を獲得するまでに成長できたわけですが、では、いったい何がよかったのか。8年間ほどゆるキャラを運営してきた私が発見した「ゆるキャラ成功の条件」をお話しさせていただきますので、もし興味あれば聞いてください。  ゆるキャラ企画の立案時は「幅広い年代に受け入れられる息の長いキャラクターにしよう」くらいのふわっとしたイメージしかありませんでした。が、実際に運用してみると当初の想定と異なるところも多くありまして……。

対象を子どもにしたら“終わり”

 ゆるキャラといえば「子どもに人気」と思いがちですが、意外と違うんですよね。未成年を対象にした瞬間に企画は、死にます。  子どもに人気のキャラって『鬼滅の刃』や『ポケモン』とかなんですよね。これに勝つ自信ありますか?  そもそも、子どもは熱しやすく冷めやすい。女子高生にウケても、卒業したら見向きもされません。  お金を自由にできる子どもはほぼ皆無ですから経済効果は期待できませんし、イベント会場で中高生がキャラめがけて「ゆるキャラがいる~☆(笑)」と奇声を上げて寄ってきたら、高確率で殴られたり、死ぬ目に遭ったりします。
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30~50代女性を狙え!
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