更新日:2022年03月21日 22:57
仕事

平野歩夢に学ぶ「怒り」をモチベ―ションに変える方法

「怒りを表現する」ということ

 この「怒りを表現する」というのは、モチベーションを維持するための大切な秘訣です。自分が理不尽に思ったことに対する怒りや、誰かに負けたことに対する悔しさを自覚すると、物事を長続きさせたり、競争で誰かに勝つために努力したりしやすくなります。  命がけの大技を軽く見られた平野選手の怒りは、察するに余りあるものがあります。また、3本目のトライについて平野選手は、ジャッジだけでなくショーン・ホワイトについても次のように言及しています。 「彼の果敢な挑戦を見て、3本目は絶対に自分が勝ちたいと思い、攻めの気持ちを保てました。彼の挑戦を間近で見てこれた事は一生忘れません。ありがとう」  このように挑戦というのは、単に技術的なものだけでは語れません。たとえば平野選手の場合、ジャッジやショーン・ホワイトに対する想いが重なって、それが行動に現れています。このように人間の行動は、技術的な側面と心理的な側面の両方によって成り立っています。  そして、心理的な部分を作っていくのに大切なのが人間関係です。人は人間関係を意識することで、自分の感情を湧き上がらせることができます。

「悔しさ」をエネルギーに変える

 平野選手は前回の平昌オリンピックでショーン・ホワイトに敗れ、銀メダルで終わりました。この時について平野選手は「悔しさだけです。それしかなかった」と振り返っています。  理不尽に対する怒り、競争相手に対する絶対に勝ちたいという欲求、負けたことに対する悔しさ。こうした荒々しい感情は抑圧しようとしがちです。これは私たちが子供の頃から、「荒々しい感情を表に出すべきではない」と教わって育つことが理由になっています。  しかし、競争で勝ったり、物事で結果を出したりするためには、穏やかな感情だけではたどり着けない部分があります。クリリンを殺された怒りでスーパーサイヤ人に目覚めた孫悟空のような感じです。  マンガと違って現実だと、「怒りを感じたから殴る」というような直情的な態度では本人も周囲も困りますが、だからといって怒りや悔しさを抑圧して生きていると、今度はモチベーション不足で悩むようになります。  平野選手のようにジャッジやショーン・ホワイトなど、自分が関わっている人間を意識して自分の感情を湧き上がらせること。そして、その感情を単純に相手にぶつけるのではなくて自分の行動に宿らせること。  この二つによって、人間はモチベーションを確保できるようになります。そのためには、自分の仕事で「この人が自分のライバルだ」と思える相手を見つけることが第一歩になります。  平野選手は著書『二刀流』(KADOKAWA)で、「誰もやっていないこと」「自分にしかできない表現」について語っています。そして、その言葉通りに夏季オリンピックと冬季オリンピックの両方に出場したり、試合でトリプルコーク1440を成功させています。  このように大きな成功を成し遂げたり、高い目標を達成するには何が必要かというと身も蓋もない話ですが、すべてが必要になります。努力、才能、ロジック、感情。そのどれか一つが欠けても大きなことを成し遂げるのは難しくなります。  その中でも、怒りや悔しさ、「絶対に勝ちたい」「あいつだけには負けたくない」という荒々しい感情は特に見落としがちです。今まで無頓着だった人間関係を意識することで、私たちは高いモチベーションを、長時間にわたってキープできるようになります。  社会には常に競争が存在します。学校のテストでも、会社の売上でも、趣味のスポーツでも、何かしらのテストや大会や成績発表が行われていて、自分と同じようにそれに参加している競争相手がいます。その競争相手を意識することで、モチベーションを作り出すことができるようになります。  学校の友人、会社の同僚、趣味のスポーツ仲間。モチベーション不足で悩んでいる方は、ぜひそうした身の回りの人間を「競争相手」として意識してみてください。「あいつだけには負けたくない」という闘志を感じられて、今よりも行動できるようになるはずです。 佐々木
コーチャー。自己啓発とビジネスを結びつける階層性コーチングを提唱。カイロプラクティック治療院のオーナー、中古車販売店の専務、障害者スポーツ「ボッチャ」の事務局長、心臓外科の部長など、さまざまな業種にクライアントを持つ。現在はコーチング業の傍ら、オンラインサロンを運営中。ブログ「星を辿る」。著書『人生を変えるマインドレコーディング』(扶桑社)が発売中

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