更新日:2022年04月13日 00:55
エンタメ

「私は映画『牛久』に騙された」外国人収容所での隠し撮り、出演者が怒るワケ

多くの外国人が、入管や警察に理不尽な仕打ちを受けている

奥さんが残した書き置き。「国へ帰れ」など、ルイスさんに対する罵詈雑言が書かれている。最後に、なぜが警視庁赤羽署の警察官のサインがある

奥さんが残した書き置き。「国へ帰れ」など、ルイスさんに対する罵詈雑言が書かれている。最後に、なぜが警視庁赤羽署の警察官のサインがある

 牛久入管に収容されて、入管では自分と同じようなことが起きていることを知ったというルイスさん。 「入管職員は面会に来る日本人配偶者に対して、収容されている夫がいかに悪いヤツか、騙されて結婚しているかなどといった嘘を吹聴します。その言い分を信じて面会に来なくなり、離婚してしまう人もいます。 『子供をおろしてしまった』という話もよく聞きました。妻にビザがある場合でも、入管は『(収容されている夫と)別れないとあなたのビザも取り上げる』と圧力をかけ、やはり夫婦関係が壊れていきます。  私が警察にやられた理不尽と一緒だと思いました。世の中に、こんなひどいことがまかり通っているんだということを伝えたかったんです。  そして叶うなら、生き別れになった子供に会いたい。殺された(堕胎させられた)子供には会いたくても会えない。妻はもう自分の生活があり、会ってももうどうにもならないでしょうけど、これだけは聞いてみたい。『どうして私を裏切ったの……?』と」

記者会見中、大声で「もうやめてやる!」と叫びたかった

ルイスさんはトーマス・アッシュ監督とSNSで連絡をとりあっていた

ルイスさんはトーマス・アッシュ監督とSNSで連絡をとりあっていた

 ルイスさんは怒りを込め、話をさらに続ける。 「『ボランティアにはできない声を、私なら世界に広めることができる』とトーマスは言っていましたが、映画『牛久』の内容は、私との約束とはだいぶ違っていました。映画にも、パンフレットにも、私のいちばん伝えたかった『過去』が一切描かれていなかったのです。入管問題は、収容所の中だけで起きているのではありません。それを伝えてくれると言うからこそ、“入管の報復”に怯えながらも映画に出ることを承諾したのに……。 『話が違うじゃないか』とチャットと電話で抗議をしました。しかしトーマスは『ごめんね。あなたのことはもっと調べないといけないから。次の映画を作ってYouTubeで流してあげるから』と答えました。私はそこで騙されたことを確信しました。彼は私たちの不安定な立場に配慮する気など持っていなかった。もう信じられない」  2月1日、参議院議員会館でも映画『牛久』についての記者会見が行われたが、会見に出席したルイスさんの声は聞き入れられなかった。 「その場にいた国会議員は『この映画は素晴らしい。これで日本人は変わることができる』ともてはやしていましたが、彼は映画の中でヒーローのように扱われている議員でした。議員というものは、私たちを助けるためにいるのではないでしょうか? なぜ、私の苦しみを聞こうとしてくれないのか。人権よりパフォーマンス。まるでポリティカル・ショーだ!  この映画は最初から『収容所がひどい』ということ“だけ”を言いたかった。そして撮影禁止である収容所内部を盗撮し、「スクープ映像」として話題にしたかった。そのために私は利用されたんです。トーマスは、正義感よりも功名心。ただ賞とお金がほしかっただけだった。  私はこれまでずっと我慢してきましたが、限界でした。記者会見の途中で『こんな映画、もうやめてやる!!』と叫びたくなった。トーマスに対して、凄く怒っています。被害者の気持ちを弄んでいる。私たちの立場が弱く、逆らえないのをいいことに利用した。トーマスには、子供を失った父親の気持ちなどわからないんです。  この映画には初めから出なければ良かったと思っています。裏切られて、自分の痛みが何倍にも大きくなってしまった。裁判をやろうかと考えもしましたが、それでもこの映画を必要としている仮放免の人たちがいるのなら、それは我慢するべきなのでしょうか……?」(ルイスさん)
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なぜ弱い立場の者が我慢を強いられるのか?
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おだあさひ●Twitter ID:@freeasahi。外国人支援団体「編む夢企画」主宰。著書に『となりの難民――日本が認めない99%の人たちのSOS』(旬報社)、入管収容所の実態をマンガで描いた『ある日の入管』(扶桑社)

ある日の入管~外国人収容施設は“生き地獄”~

非人道的な入管の実態をマンガでリポート!


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