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映画監督がパワハラを犯した過去を告白「人格を否定するような罵倒をしていました」

「自分のキャリアのためにスタッフを踏み台にした」

映画業界――ありえないスケジュールですね。 古澤:ちなみに、もっと予算の大きい映画では1日7ページでも撮れれば上出来です。それでようやく普通のスケジュールです。『トワイライトシンドローム デッドクルーズ』では、はっきり言って非人間的な流れ作業で目の前のことをどんどんやらなくちゃ間に合わなかったんです。 僕が当時、自分を正当化して思っていたことは、『自分はスケジュールをこなして作品を成立させようとしているのだから、その実現のためには怒鳴ったりすることも仕方がない』というようなことでした。自分の思うように進まないイライラを助監督にずっとぶつけている状況でした。 ――そんなに過酷な現場で、スタッフの睡眠時間や食事の時間は確保されていたんですか? 古澤:食事時間についてはさすがに確保はされていました。しかし睡眠時間については、おそらく、助監督はほぼなかったと思います。今なら事前にプロデューサーに「このスケジュールじゃ無理です」と言えます。でも当時の自分は監督業が上手くいっていなくて焦っていました。自分のキャリアのためにスタッフを踏み台にしたんです。

被害者意識から自分の加害性に向き合えなかった

――いろいろ驚きなんですが、そんな現場は当たり前なんですか? 古澤:撮影当時はフィルムからデジタルに変わって、撮影日数も短くなった頃です。全盛期のVシネマでいえば、3週間で2本撮りだったのが1週間で2本撮りになるとか。今はもっと酷くなっているかもしれません。 はっきり言って、日本には予算やスケジュールを踏まえ、「作ってはいけない」映画がたくさんあると思います。でもキャリアの少ない監督はプロデューサーの「きつくてもこれを乗り越えれば名刺がわりになるから」という言葉に負けて言いなりになっていることが多いですね。 ただそういう被害者意識から脱却できなかったことで、僕は自分の加害性に向き合えなかったのだとも思います。
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演出部にパワハラを指摘されハッとした
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1984年生。京都府在住。かつて勤めていた劇場でパワハラ被害に遭い、日本の映像業界のあり方に疑問を持ち始める。以前は映画ライターとして活動していたものの、現在は業界に見切りをつけ、ボードゲームとヒップホップの取材を続けている。

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