更新日:2022年05月20日 19:09
エンタメ

タヌキ社長のいる会社が日本を明るくする? バカ映画の巨匠が描く真骨頂

「僕は小二病」河崎監督のカミングアウトにオファー快諾

「僕は小二病なんです。永遠の小学生」と語る河崎実監督

「僕は小二病なんです。永遠の小学生」と語る河崎実監督

――町さんは、河崎監督の『「干支天使チアラット外伝」シャノワールの復讐』『遊星王子2021』に出演されていますが、最初の接点はなんだったんですか? 河崎:僕の盟友に音楽プロデューサーの鈴木啓之という男がいるんですが、町さんと昭和歌謡のイベントをやっていて、それをよく観に行っていたのがきっかけですね。いつか町さん主演で昭和的なものをやりたいなと以前から思っていたんですが、今回、町さんご本人から打診があったので、これを機に思い切ってオファーしました。内心、「タマキン丸出しのタヌキ社長に惚れるヒロインなんて受けてくれるかなぁ」と思っていたんですが、快諾してくれたので凄く嬉しかったです。 ――町さんは、このヒロイン役、抵抗なかったんですか? 町:河崎監督ご自身が言っていたんですが、「僕は小二病なんです。中学生どころかじゃない、永遠の小学生」だと。それを聞いて、「なるほど、小学生ならしょうがないな」と思っちゃって(笑)。そういう視点で捉えると、なんか急に楽しくなってきて、普段は絶対に言えないセリフや単語も、「面白い! ぎゃはは」みたいなノリで不思議と臨めましたね。 河崎:セクハラだ、パワハラだ、コンプライアンスだと、何かと色々大変な時代になっちゃったけど、「こんなことも許されないのか!」っていうね。ふざけていますが、こういう大らかな世界があってもいいじゃないかと。コロナや戦争でもう真っ暗ですよ、世の中は。だから、せめて映画館に来たときだけはゲラゲラ笑って楽しんでほしい、それだけなんですよね。 ――町さんにとって、初の主演映画ですが、不安はありませんでしたか?
初主演映画『タヌキ社長』で、美声を披露した町あかり

初主演映画『タヌキ社長』で、美声を披露した町あかり

町:河崎監督が、「歌を歌う人は大丈夫なんだよ、できるから大丈夫、大丈夫、あはは!」みたいな感じでおっしゃってくれたんですが、「本当にそうなのかな?」と最初は半信半疑でした。でも、松田聖子さんも、山口百恵さんも、昔から歌手のみなさんって演技にも挑戦されているので、ここは腹を決めて、私も思い切ってトライすることにしました。ただ、演技というよりも、撮影が1日半しかなかったので、とりあえずセリフをかまなければOK! みたいなところがあったので、あれでよかったのかどうかは不明です(笑) 河崎:歌手って、一つの世界観を3分くらいの中で作っちゃう人だから、僕の映画でヒロインを務めるなんて屁みたいなもん。もうバッチリでしたよ! 町:本当ですか?ありがとうございます! でも、現場はもうワクワクしましたね。私、映画の『男はつらいよ』が大好きで、好きすぎて本も出している(「町あかりの『男はつらいよ』全作ガイド」青土社)くらいなんですが、一人の映画ファンとして、自分がヒロイン役で大きなスクリーンに映っていることが素直にうれしかった。寅さんのマドンナの気分が味わえた感じですね。

歌あり、コントあり、宴会芸あり!なんでもありが超楽しい

宴会芸を披露するタヌキ社長

宴会芸を披露するタヌキ社長

――町さんは挿入歌として歌を3曲披露していますが、うち2曲ご自身で作詞・作曲されていますが、どういうイメージで作られたのでしょうか? 町:河崎監督から、「切なく歌えるラブソングある?」って聞かれて、「ええ、どうしよう」って。あまりそういうラブソングとか書かなくて、変な歌が多いので(笑)。そんな時に、ふと他の方に提供した曲があったのを思い出して、ご提案させていただいたのが、あの最初の英語の曲『Am I a bit strange?』でした。もう一曲は、「最後に明るく終われるような曲がほしい」というリクエストが来たので、タヌキにちなんで『ポンポンコポン(お月様の下で)』という音頭調の歌を映画用に書き下ろしました。 ――仕上がりはどうでしたか? 河崎:いやもう、ばっちりじゃないですか! いまみちともたかさんが書いた『恋人にもう見えない』も、町さんにピッタリでした。昔の娯楽映画は、自分の心情を急に歌い出すMVを挿入するのが定番だったんですが、町さんの歌のシーンはそのオマージュですね。 ――芸人さんのコントや宴会芸もふんだんに盛り込まれていましたが、物語を乗っ取るくらいのボリュームがありましたね。
若手人気芸人・レインボーも出演! 映画『タヌキ社長』

若手人気芸人・レインボーも出演! 映画『タヌキ社長』

河崎:僕の大好きな掟ポルシェさん、ショウショウさん、そして若手芸人で一番注目しているレインボーさんに出演いただいたんですが、ある意味、森繁さんの『社長』シリーズは、“芸”を観る映画でもあるので、たっぷりと尺をとりました。今の時代、人気のある芸人さんは、YouTubeなどで物凄く再生されていますが、未来永劫、彼らの芸を残すためには、映画にしないとダメなんですよ。クレージーキャッツも加山雄三さんも森繁さんも、映画になったから作品として残るんですよね。 ――映画を観ていて、ふと、「コントや芸の部分、結構長いなぁ」ってなんとなく思っていました。タヌキ社長がなかなか出てこないなって(笑) 河崎:若い人は『社長』シリーズを観たことないと思いますが、芸人が芸を見せるのもこの映画の真骨頂なので、怒らないで楽しんでほしいです。 ――何気に元トカナ編集長の角由紀子さんもインタビュアーで登場し、わけのわからない質問でタヌキ社長を困らせていますよね? 河崎:スター編集者ですからね。角さんが投げかける質問は、アドリブじゃなくて全部セリフなんですが、軍隊タヌキの話だけ、彼女から提案があったんです。変な質問にタヌキ社長がやや困っている感じを、関智一さん(タヌキ社長の声)と、谷口洋行さん(スーツアクター)がうまく表現してくれました。
次のページ right-delta
映画を観ている時くらい笑顔でいてほしい
1
2
3
広告制作会社、洋画ビデオ宣伝、CS放送広報誌の編集を経て、フリーライターに。国内外の映画、ドラマを中心に、インタビュー記事、コラム、レビューなどを各メディアに寄稿。2022年4月には、エンタメの「舞台裏」を学ぶライブラーニングサイト「バックヤード・コム」を立ち上げ、現在は編集長として、ライターとして、多忙な日々を送る。(Twitterアカウント::@Backyard_com)

記事一覧へ
『 タヌキ社長 』
監督:河崎実
キャスト:町あかり、関智一(タヌキ社長の声)、ジャンボたかお(レインボー)、池田直人(レインボー)、モト冬樹、吉田照美 ほか
製作:有限会社リバートップ
主題歌:ぼんぼん花―――火
キャラクターデザイン:森野達弥
配給:TOCANA
2022年5月20日(金) ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ他 全国ロードショー!
おすすめ記事