更新日:2022年06月08日 09:45
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炊き出しに並ぶ人々。ホームレスは少数派、タワマン在住も…貧困転落の防波堤

僕のようなホームレスは少数派

インフレ直撃![低所得層]の苦境

「コロナで困窮しました。ホームレスをしていると知られたくないので、家族とは連絡を断っています」(大沢さん)

 独身の大沢幸弘さん(仮名・59歳)は、9年前に親の介護のため、それまで勤めていた商社を退職し、時間の融通が利くという理由から「なんでも屋」を開業した。だが、新型コロナが直撃、収入が途絶えたのをきっかけに、住んでいた首都圏郊外の賃貸アパートを引き払い、上野界隈でホームレスを始めた。今から9か月前のことだ。 「思うように収入を伸ばせず、貯金も底を突いた。張り詰めていた糸が切れて、家族に何も告げず、人目を避けるように家を飛び出しました。姉弟も余裕があるわけではなく、僕が住んでいた地域は閉鎖的だったので、生活保護を受給したら家族全員が白い目で見られてしまうから頼れませんでした」  収入のない大沢さんは、さまざまな炊き出しで食料を調達し、飢えを凌いでいる。 「どこの炊き出しも、僕のようなホームレスは少数派。むしろシングルマザー、学生、非正規社員、年金生活者など、家計の節約のために来ている人のほうが多い」

バスを乗り継いで来たタワマン在住の男性

 家のない大沢さんとは違い、谷岡友和さん(仮名・61歳)は、間取り2LDKの、湾岸エリアのタワマンで独身生活を送っている。大手鉄道会社に正社員として入社した彼は、4000万円のマンションを10年ローンで購入し完済している。だが、10年前に社内のいざこざに巻き込まれて、警備会社に転職。現在は、同社でシニア枠の正社員として働き、月の手取りは14万円ほどだ。 「家賃はゼロですが、エネルギーの高騰で今冬の月の電気代が例年の1.6倍、1万円まで跳ね上がった。年齢的にも、夏や冬はどうしても冷暖房がないと辛いので、電気代の高騰はかなり痛い。ほかにもバスのお得な紙式回数券の販売中止など、目に見えない値上げやコスト増が家計に響いている」  さまざまな物価高の影響で出費が増大。貯金に回す余裕はない。 「年金は年間200万円くらいなので今より生活が良くなることはない。インフレが続くと、もう削れるのは食費とNHKの受信料くらい。だから昨年9月から定期的に一日バス乗り放題の乗車券を500円で買って、複数の炊き出しを回って食費を浮かしています。今日の炊き出しは3食分になるので、コスパは最高です」
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“貧困”に転落させない
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