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大阪以外の国民に「大阪での改革」はドーでもいい/倉山満の政局速報

もしもの時、大阪市長補佐をする総理大臣が誕生してしまう

 こうした複雑怪奇な組織構造なので、極めて属人的に運用されてきた。言ってしまえば、ここまでは松井一郎代表の力量でまとめ上げてきたのである。  松井代表は、大阪市長。仮に何かの突発事態で維新が衆議院の多数派になった時、「松井首相」は憲法上ありえない。そういう時のために、国会議員団長や共同代表がいる。これまでは片山虎之助で、今は幹事長などを歴任してきた馬場信幸。仮に村山富市社会党内閣のように突如として自民党が「他の党に総理大臣を渡す!」と言い出した時、「片山首相」が誕生した訳だ。本人も含めて、誰もリアリティーを感じない話だろう。  もし今そのような状況になれば、「馬場首相」だ。しかし、馬場共同代表は「代表の補佐」が仕事だ。総理大臣が大阪市長の補佐を行うこととなる。もしもの時を想像しただけで、いびつな構造がわかる。

維新の代表だけが一度も国会議員経験者ではなかった

 この点に関し、維新の歴史は複雑で、他党と合併しては党を乗っ取られかけたという経緯がある。過去の経緯には同情する。しかし、現実に野党第一党の地位が見え、自民党に対抗して政権担当可能な大政党に脱皮するには、今の時期にこそ改革が必要だろう。普通に考えて、3年間は国政選挙が無いのだから。  これを松井現代表も心得ていたのか、参議院選挙の開票日に代表辞任の意向を漏らし、初の代表選挙が行われることとなった。公開討論でも、他の党の党首は国会議員か国会議員経験者。一度も国会議員を経験したことが無いのは、維新の松井代表だけ。首長が国政に関し他党と丁々発止の議論をしても、どうしても説得力を欠くのは否めない。  後継は今のところ、馬場共同代表と目されている。属人的な部分、党の内部改革に関しては、あえて言わない。ただし、一つだけ提言する。  党首の名称を「代表」から「総裁」に変更しては如何か。

政権を担う気のある政党の党首は「総裁」を名乗る

 ここまで述べてきたような事情で、維新は他の党と違って、規約を読み替えるだけの名称変更は不可能だ。日本維新の会の代表の名称を総裁にするのか、国会議員団の団長を総裁とするのか、あるいは抜本的な組織改革を行うのか、そのすべてで複雑な手続きが必要だ。それも、今度の代表選挙で議論したらいい。  ここで述べたいのは、「党首の名称を総裁とする」との合意ができるか否かだ。  1900年の立憲政友会以来、やる気がある政党の党首はすべて「総裁」だった。立憲同志会など、衆議院で第一党となった途端に、党首の名称を「総裁」に変更した。  敗戦直後も、政権を担う気のある保守政党の党首は「総裁」を名乗っていた。
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自民党の党首だけが「総裁」を名乗り続けることが、55年体制そのものなのである
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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