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大阪以外の国民に「大阪での改革」はドーでもいい/倉山満の政局速報

 7月10日に投票が行われた第26回参議院選挙。日本近現代史の専門家である憲政史家・倉山満氏は「55年体制の打破。そして、全国政党へ脱皮をしたいならば、まず、党首の名称を『代表』から『総裁』に変更しては如何か」と語る。一体、その意図とは――(以下、倉山満氏による寄稿)。
日本維新の会

(左から)松井一郎代表と吉村洋文副代表 画像/日本維新の会 参議院選挙2022特設サイトより

今回の参院選、ミニ政党ならば立派な数字

 今回の参議院選挙で、日本維新の会は大方の予想通り躍進したと報じられる。確かに、比例代表では、立憲民主党を抜いて野党第一党。目論見通りだ。  しかし、躍進と喜ぶには、数字が寂しい。  3年前の16議席から、21議席へ。自民119、公明27の与党に、野党第一党の立憲は39。自慢の比例でも8議席で、立憲の7を上回っただけ。ミニ政党ならば立派な数字だが、将来の政権を担うには、反省が必要だろう。

維新は“ようやく出てきた”マトモな野党

 政策に関して、維新は「ようやくマトモな野党が出てきたか」と期待できる。特に、皇室に関してだけは、手放しで喜んでよい。  菅義偉内閣が、悠仁殿下への皇位継承を確実にし、皇位の継承を少しでも安定させるために、立派な報告書を提出した。この報告書を全政党が持ち帰り、検討した上で意見書を提出することとなっている。維新は早くから熱心に検討し、今年4月15日には意見書を提出している。現時点で意見書の提出は維新だけなので、この一事で称揚(しょうよう)して良いが、中身も素晴らしい。 「先例」に基づいた議論を行うべしとの意見だった。これまでは、歴史や伝統を無視して皇室を好き勝手に作り変えようとする議論が幅を利かせていただけに、野党第二党がこのような真っ当な議論を行うことで、憲政の発達が期待できる。守るべきところを守り与野党が一致しているからこそ、批判すべきを批判できる。特に藤田文武幹事長は、尊皇の心が篤く、政策にも詳しい。岸田内閣に対しても言うべきことを言っている。他にも、立派な国会議員を何人も知っている。

党勢拡大の方針と組織改善が課題

 ただし、期待できるが故に、さらなる飛躍を望んで厳しいことを書く。  まず、国家重要政策である。自民党は金融緩和継続と防衛費増額を打ち出した。これに維新は賛成している。立憲共産党のように反対に回るのは論外だが、今の政府与党の景気回復策と防衛力強化策に諸手を挙げて賛成できるのか。「もっと減税のような財政出動を行うべきだし、5年以内などと言わず来年から防衛費倍増ではないのか」のような批判をする、健全な野党であるべきではないのか。  日本維新の会は、地域政党から全国政党への脱皮を図っているように見える。政策に関しては、政権担当能力を身に着けているところか。大阪府と市で成功した行政改革以外の、国家主要政策に関し、向かっている方向は間違っていないと思われるので、ここは見守りたい。  むしろ党勢拡大の方針と組織改善が課題だ。
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大阪以外の国民にとって「大阪での改革」は、ドーでもいいのだ
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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