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山上容疑者に共感する人たちの知られざる胸中「怒りの矛先は、いつしか社会に向かっていた」

 安倍晋三元首相の銃撃死事件を巡っては、凶行に及んだ容疑者・山上徹也に極刑を望む意見がある一方で、その不幸な生い立ちから擁護する声も上がっている。ネット上に溢れる言葉は、同情、共感、憧れ、好意……と、どれも殺人者には不似合いなものばかりだ。この熱狂の正体は何なのか。山上容疑者を通して、現代社会の闇に光を当てる。

山上に共感する人たちの胸中とは

山上徹也

写真/朝日新聞社

 山上容疑者の凶行は断じて許されない。しかし、彼の過去が明らかになるにつれて、同情や共感の声が増えているのも事実だ。宗教2世、就職氷河期世代、貧困、毒親……。山上容疑者はある意味、さまざまな現代社会の問題を一身に抱えた存在とも言える。  実は、記者も山上容疑者に対してどこか共感してしまう一人だ。私の母親は“狂信的”な仏教徒だった。さほど裕福な家でもないのに2000万円超の無謀な献金をし、親族はおろか私の友人の親にまで勧誘を行い、母からはどんどん人が離れていった。  ある日、「狂った子を殺すのは親の役目だ」と、私の祖父は包丁を振りかざし、母を殺そうとした。山上容疑者のものとされるツイッターにも同じように献金を続ける母親に祖父が怒り、包丁を持ち出したという投稿があった。あの光景を彼も見ていたのだろう。

「もし同じ境遇だったなら、復讐の誘惑をはね返せただろうか」

安倍銃撃事件

銃撃事件の現場検証の様子。写真/朝日新聞社

 宗教による家庭崩壊。そこに共感する宗教2世は多い。キリスト教系新宗教の2世として育った30代男性が話す。 「父は信者になるために公務員を辞めて生活苦に。母が泣きながら親に借金を請う姿を見て育った。私は被害者の会やカウンセラーなどに出会い、怒りにまかせた凶行をせずに済みましたが、もし自分が山上と同じ境遇だったなら復讐の誘惑をはね返すことができただろうかと自問しています」
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「怒りの矛先は、いつしか社会に向かっていた」
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