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青い目をした“日本人”ジャーナリストが「トランプ現象」を総括する

「実は、2008年の大統領選でオバマを支持した人々が、今度はトランプを大統領に当選させたのです」――。  ジャーナリストのケン・ジョセフは、いまだに世界が戸惑っている“トランプ現象”をこう読み解いた。  ボランティア活動家でもあるジョセフは、海外ではロスアンゼルス地震、イラン地震、国内では阪神大震災、東日本大震災、最近では熊本地震など、現地に駆け付けては被災者支援を精力的に行っている。そんな経験から培った“現場感”が、ジャーナリストとしての視点を研ぎ澄ましているのだろう。
青い目をした“日本人”ジャーナリストが「トランプ現象」を総括する

ブレグジット(英のEU離脱)の次は、トランプ現象を巻き起こした“トレクジット”(トランプによる既存体制からの離脱)、そして被災地で生まれつつある日本の“ジェクジット”に連なる世界的な潮流が起きている」と話すケン・ジョセフ氏

 昨年の米大統領選では、日本のジャーナリストとして唯一トランプタワーの選対に入ることができた筆者とともに、ジョセフも取材に勤しんだ。 「オバマとトランプは思想が180度違うので一見わかりにくいが、実際に取材してみると、2人の大統領を誕生させたのは、ともに『声なき人々』だった。権力からその存在を無視されてきた彼らにすれば、思想は右でも左でも構わないから、自分たちの声に耳を傾けてくれる大統領を望んだというわけです。ところが、こうした構図を米日のメディアはなかなか理解できないでいる……」  米日の既存メディアは大統領選の予想をことごとく外した。  ただ、トランプの当確が出るや否や、アメリカのメディアはなぜ間違えたかを検証する作業に取り掛かったが、日本では『なぜアメリカのメディアは間違えたか?』という論調に終始し、自らの過ちを顧みることさえしない……。とはいえ、ジョセフが指摘するように、アメリカの既存メディアが「声なき声」を汲み取れなかったのも事実だ。 「大統領選でトランプの支持者が被っていた『アメリカを再び偉大な国に』と書かれた帽子を、ヒラリー陣営はもちろん、既存メディアは『ダサい』とバカにしていました。ところが、喜んで帽子を被っていた人々こそが一般的なアメリカ人なのです。既存メディアを含むエスタブリッシュメントは、そこを見誤った。  振り返れば、アメリカではそれまでのメディアが市民の声を聞かなくなったとき、CNNが登場し、『誰が24時間ニュースを見るんだ?』とバカにもされたけれど、支持を得ました。ところが、そんなCNNも力を付けていくと、いつの間にか既得権益の側に入ってしまった。その後、CNNに代わり市民に近い報道を始めたのがFOXニュースでしたが、今やエスタブリッシュメントの仲間入りです……。そんな中、声なき人々の声をすくい上げたのは、SNSを含むネットメディアだったのです」  トランプ自身、大統領選を「インターネットの勝利だ」と評している。そして、メディアとの対決姿勢を強める新大統領は、ホワイトハウスの会見室から既存メディアを締め出そうとしているという……。  報道の自由を侵す暴挙にも思えるが、どういうことなのか。 「アメリカのメディアはあまりにも偏っており、大統領選では『ヒラリー=善』『トランプ=悪』という報道ばかりしていた。アメリカの既存メディアは日本の記者クラブメディアのように、ホワイトハウスに自由にアクセスできるが、トランプはこれを締め出して、ネットメディアを招き入れ、偏向報道を是正しようとしている。トランプはあまり好きではないが、こうしたアンフェアは正されるべきです」  実は、ジョセフは「左寄り」を自認し、日本では平和憲法を守る活動を行うほどのリベラルだが、“第4の権力”と化したメディアの不公正を是としない。翻って日本では、メディアが自主規制という名の下に、見えにくいかたちで偏向を強めている……。
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