世界で唯一の“家畜写真家”から見える世界「動物たちの感情が伝わってくる」
可愛らしい動物たちの写真。それらを撮影したのは、北海道に住むタキミアカリさんという女性だ。彼女は、世界でおそらく唯一の「家畜写真家」。なぜ、家畜の写真を撮影するようになったのか、本人に話を聞くと「食といのち」が見えてきた。
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――まず、家畜写真家としてどんな活動をされているのか教えてください。
タキミアカリ(以下、タキミ):私自身で家畜動物を撮りに行くこともありますし、依頼を受けて撮影をさせていただくこともあります。それらの作品で写真展を開催したり、また、学校から講演や授業のご依頼を頂いて、学生さんの前でお話をすることもあります。
――やはり家畜動物にもしっかり向き合えば、一頭ごとの個体差は見えてきますか?
タキミ:一頭ごとに全然違った個性があります!とても人懐っこい子もいれば臆病な子もいて、本当に様々です。
――そうした動物たちの、どんな瞬間を撮りたいと思ってシャッターを切っていますか?
タキミ:自分で「こんな瞬間を」と意識して撮ってきたわけではないんですが、振り返ってみると動物が意思表示をしているというか、感情が垣間見えている瞬間の写真が多いです。
――例えばどんな感情が伝わってきますか?
タキミ:牛だったら、レンズを覗いてきて「なに撮ってんの?」と懐いてくるような感じです(笑)。「撫でてよ〜」と甘えて近づいて来る時も撮りたくなりますね。そうした写真を撮っていると、作品を見た方から「人間のように見える」ともよく言われます。
――現在の活動をはじめたきっかけを教えてください。
タキミ:銀行員として働いていたんですが、農業に関わりたくて退職し、ニュージーランドで1年3か月ファームステイをしました。そこで、家畜動物と触れ合って、大学の頃から趣味でカメラをやっていたので、家畜動物の写真を撮るようになりました。
――それでも「家畜写真家」という肩書きを掲げるには大きな決意が必要だと思います。
タキミ:ニュージーランドで出会った子牛がきっかけです。ある寒い雨の夜に、放牧地を見回っていると、1頭の子牛が生まれているのが見つかりました。早産だったようで体も小さく、見つけた時にはすでに衰弱していましたんです。それでも頑張って生きていたので、元気になってくれることを願いながら、寒くないように腕でしっかりと抱いて温めました。
――母牛はいなかったんですか?
タキミ:育児放棄されてしまったようで、いませんでした。私は知識がなかったので、なんとか助けられるだろうと思っていたんですが、牧場の方から助けられないということを聞かされました。
――救ってあげるのが難しいので、死んでいくのを見守るしかないということでしょうか。
タキミ:いえ、もうその子牛は牧場内で銃殺されました。ニュージーランドには「助からないのに生かしておくのは、苦しむ時間が長くなるだけ」という考え方があって、それに基づいて安楽死させてあげたということです。それを知らなかった私にとってはとてもショックな出来事で、しばらくの間、涙が止まりませんでした。
――何が正解かはわかりませんが、辛いですね。
タキミ:その子が、たった数時間の「いのち」ではあったけど、私に「いのち」の大切さやたくさんのことを教えてくれました。その出来事がきっかけで、家畜写真家として活動をはじめました。
表情豊かな家畜動物たち
きっかけは一頭の子牛との出会い
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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『カチク写真展』
【場所】歯ART美術館 4階展示会場
〒761-0130 香川県高松市庵治町生ノ國3180−1
【開催期間】 2023年4月2日(日)- 5月28日(日)
【開館時間】10:00-17:00(年中無休)
【入館料】大人600円 小学生以下無料 65歳以上300円
【ギャラリートーク】3階イベント広場
5月21日(日)13:00-14:20 定員30名(予約制) 参加費300円(入館料込)
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